エスパーモノローグ

 私は超能力者だ。読心術もできるし瞬間移動もできる。スプーンはいとも簡単に曲がる。


 私は毎朝6時きっかりに清々しく目覚める。というのも、私は毎日寝る前に「私は明日の朝6時に清々しく目覚める」と予言しているからだ。私の予言は外れない。目を覚ますと、今日一日何が起こるかを予知する。私の予知能力を持ってすれば、24時間の間に何が起こるか、確実に知る事ができる。今日は客が18人と、雑誌の取材の申し込みがくるようだ。それ以外はいつもと変わらぬ一日のようである。取材は鬱陶しいので、記者の気が変わって取材を取りやめるようにしておく。他人の心を読んでそれを書き換えるなど、容易い事だ。

 客というのは、私に占われに来る客の事だ。私は占い師をしているのである。もちろん、物体を出現させる能力を使えば、札束でも食べ物でもなんでも出せるから、仕事などする事なく生活できる。だが、それではつまらないのだ。かといって、例えばFBI超能力捜査官みたいな仕事をするのは、目立ちすぎて危険だ。テレビに出るのもいけない。超能力者が世界で私一人とは限らないし、他の超能力者にライバルとして狙われたら大変だ。だから、細々と占い師をしている。

 私は、客たちの相談を聞いている間、客の心の中を覗き見て楽しむ。数奇な人生を覗くのは、まるで小説を読むかのようだ。犯罪者、不倫中の妻、大富豪、等々。それは空想的でかつ現実的な小説である。もちろん、そういう面白い人生を送っている客しか来ないようにしている。ありきたりな人生など見たくはない。

 私は客の未来を予知してアドバイスする。あまり当たりすぎてもいけないので適当に嘘も言う。だがそれでも普通の占いよりは当たるようで、大々的な宣伝は阻止しているというのに口コミで客が少しずつ増える。今日は18人も相手するのは面倒なので、5人に減らしておこう。つまらない奴を選んで、気を変えさせるのだ。占いなんて、くだらない、と。


 だが私は時々不安になる。いつか突然、この能力が消えてなくなったりしないだろうか、と。もしそうなったらどうやって生きていけば良いのだ。生まれてからずっとこの能力で生きてきたというのに。そんな恐怖を想像すると、焦燥感が足下から襲ってきて私の胸をつつく。そういうとき私は、「不安は消える」「私の能力は永遠に続く」と、能力が消えてしまわないうちに早口で予言する。私の予言は外れた事がない。


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 短編第48期(2006年7月)投稿。