『症例A』 多島斗志之

三読目くらい。

多重人格モノなのですが、なかなか好きです。
前に読んだビリー・ミリガンは、一応ノンフィクションだったわ けですが、こっちは完全にフィクションです。それによって、ビリーがダニエル・キイスによって脚色されつつも構成が重くなってたりしたのに対し、こっちは 適度なフィクション性で、小説としても読んでて面白いです。
しかもこの小説はそれでいて、リアリティも結構重視してます。巻末の参考文献の量か らもそれが見えるし、実際精神医療の現場に携わっている人たちからの評判もいい“らしい”です。小説なんだからリアリティなんてどうでもいいっちゃどうで もいいんですが(ましてや素人が知らない分野ですしね)、まあ悪い感じはしませんよね。その辺のバランスが取れていていい感じです。
ガリバー旅行記の引用であったり、作品中何度も出てくる、主人公の精神科医榊の精神分析に対する懐疑であったりといった要素が、作者の背景知識を感じさせて読んでて満足感が得られる、みたいな感じでしょうか。

後はまあ、全体として、多島さんはキャラクターにしても構成にしても綿密に書いているのが見えて、読んでて好感が持てましたね。