『初恋』 ツルゲーネフ

なんというか、完成度が高い。ツルゲーネフの最高傑作とも言われているらしいけど、この一作読んだ限りでは確かにそうなのかもしれないと思う。
最近ロシア文学の有名どころをちょんちょんと読んでいるわけだけど、ゴーゴリ「鼻」「外套」やプーシキン「スペードの女王」が(ストーリーの)技巧的な意味ですごい、おもしろい、と思ったのに対して、ツルゲーネフ「初恋」はストーリーの中身とか描写(翻訳で伝わる範囲)でおもしろいなと思いました。まあ作品の長さ的に焦点がかわってくる、って話でもあるでしょうけれど。

ただ、この本の『あらすじ』として一般的に説明されるし岩波文庫の表紙にも書いてある、「16歳の少年が初めて恋した女性ジナイーダが、他ならぬ少年自身の父と恋に落ちてしまって云々」っていうのからイメージしていた内容とは、実際読んでみるとかなり違っていました。
もっとドラマティック(「劇的」という意味で)な話が進むのかと思っていたんですが、思ったほどは派手じゃないし、主人公は父親を殺したいとか思うほど憎んだりもしないし、苦しみや狂おしさもそこまで激しく出てくる訳じゃないんですよね。半自伝的みたいだから、演出をやりすぎずに書いたのかなぁとも思いますが。でもそれによって、16歳の少年の微妙な心の動きとか、しかもそれを40歳の時点から振り返って記述しているときの時間経過のフィルターとかの感覚がよく表現されていて、面白く読めました。

あとは、こういうのが二葉亭四迷あたりによって日本に入ってきて、日本の自然主義文学に影響したとかしないとかいう話も聞きますが、いわれてみるとそんな雰囲気を感じ取る事ができます。ていうかいろいろ調べてみるとやっぱロシア文学と日本文学って結構関係あるんですね。面白い。

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