『卍』 谷崎潤一郎

やっぱり谷崎の音に対するこだわりは恐ろしいほどだと思う。
全編が関西弁で回想の形式で語られる。つまり地の文が関西弁。もちろん登場人物も皆関西弁で喋るから、途中何ヶ所かだけ入る注釈以外は全て関西弁ということになる。
内容としては同性愛を扱っている。ただ、そのテーマ設定自体はもうこの時代にはそこまで革命的ではなかっただろうし、別に描写が過激なわけでもない。でも最後の方なんか、本当に登場人物たちが皆追いつめられて狂ったようになってしまっていて、おそろしい。倒錯と狂気を描くのも谷崎は本当にうまいな、と思う。『痴人の愛』はもちろんだし、『秘密』の女装するところなんかすごく好きで……。そしてこの作品の場合、そこへ持っていくまでの語りがまた、関西弁でされているものだから、独特の情熱感を醸し出しているように思えた。

ところで僕は関西弁をそれなりな程度話せるので、この小説の再生も容易だった(それなりの精度で谷崎の想定したアクセントやイントネーションで読めている、はず)けれど、関西弁を話せない人が読んだ場合と感じ方の差はどれほどあるんでしょうか。そこが気になります。

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