『know』 野崎まど

 ネタバレ含む。クリティカルではないつもりだけど。
 聞いていた通りの巧い小説だった。物語の推進力が維持され、加速し、収束し、余韻を残して投げ飛ばす。
 典型的なややライトなサイバーパンク風、多少のディストピア感あり、ボーイ・ミーツ・スーパーガールモノ、といったところで、パーツ個々にはとくに真新しさは感じない。が、新鮮に感じたのは二点。

 一点目。タイトルでもある、知る/know、ということの掘り下げ。冒頭、未来の京都の修学旅行生たちは、やたら解説口調で、それこそスマホでWikipediaを見ながらといった感じでしゃべっているけれど、まさにそれが意図した演出であったことに舌を巻く。検索して今まさに仕入れた知識と、もともと持っていた知識とを区別せずに喋ったり文章を書いたりする現代人の行動が(このブログだってそうだ)、そのまま着想になっているのでは、とも思える。
「科学が求めるものはなんだ?」
 プロローグの最後(そう所詮ここまではプロローグなわけだ)、このような巧い物語の構造上宿命的に退場しなければならない(それも二度も!)カリスマは言う。
「”全知”だよ」
 ここにおいてこの物語の到達点は”全知”であることが示される。では全知とはなんなのか。全てを知ること。すべてを知るためには、いま自分は何を知らないのかを知らなければならない。いま自分はなにを知らないのか。その探求のために(あるいは主人公や、私達読者の探求を促すために)、彼女は4日間を使った。そうして辿り着いた場所は、ある意味正統派であって、やはりこのパーツには真新しさを感じない。というか、人類史上もっともみんなが気にしてきたことだ。けれど、そこに至るまでの道筋は、今までにあまり触れたことのないもので、面白く読むことができた。

 二点目。物語の結末。これくらいのスケールの世界の変え方、良いな、と思った。一人や二人の脳の中で完結してしまうのでもなく、人類が直球でどうにかなるわけでもない。このバランス感覚と、エピローグの表現手法は、非常に強力だと思った。投げつけてくれる。

 あと、もう一つこれは別に新鮮っていうわけじゃないけど巧いと思うのは、この小説は魅力的な反復を幾つか備えているということ。装備しっかりしてますね、という感じ。って初めてです、とか。

 良くない点は義務みたいなセックスシーンがあることです。

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