『ヴァンパイア・サマータイム』 石川博品

 青春恋愛系であとがきに書いてあるとおり吸血鬼が普通の存在なので別に吸血鬼要素をなにかうまく使っているわけではない。強いて言えば欲望されたいポルノとして使っている。ポルノってとてもいいですね。吸血欲求なら女の子に欲情してもらえてなおかつそれがしょうがないみたいになるからな。お話は平凡だと思ったけど、ギャグが好みっていうかなんか登場人物の漫才力が高かったと思うので、そこで楽しく読めた。

インターステラー

  TARSさんもふもふ映画。クーパーハウスではコーヒーを1杯頼むごとに1回TARSさんをもふもふすることができる。普通にマジなSFだったので、「あ、普通にマジなSFだ……」と思った。なんか来るとかじゃなくて人類の可能性SF系だ。とても面白かった。『「ダークナイト」「インセプション」のノーランが送る』とか広告するのは誤解を招く気がするが。

『月見月理解の探偵殺人』 明月千里

 クソ小説。ネタバレを含む感想を書きます。

 あまりのクソさに読了時に本を壁に投げつけそうになりましたが、Kindleで読んでたので投げるに投げられず、本当にクソでした。しかし一晩経過するとなんかクソなりに楽しめたなみたいな感想になってきて本当にクソ。

 いいところから言うと、理解さんは良い。こういうのは良いんですよ。非常に。シーンとして好きなのが、副委員長様の悪を暴くところで、これはたいして物証とか無いんだけどパフォーマンスで宮越さんを悪に仕立てあげていって聴衆が完全にそれに乗せられている(と、主人公が一人冷静に観察している)という極めて人狼なシーンです。人狼モチーフの割にたいして使ってないわけですがこのシーンの人狼の使い方は光った。でもゲームの話にこのシーンでは言及してないし、人狼知ってる人じゃないとわからんだろう。

 でもその直後のなんか包丁持ってくるやつがクソすぎてダメ。完全にクソ。擁護のしようがない。

 あと本投げポイントとしては主人公が死なない点です。ここまでやらせておいてれーくんを始末しないのは怠慢にも程があると思う。普通にこいつは始末して理解さんと次の話に進めよ。まあでもじゃあどうやって殺すねんといわれれば、うーん。理解さんに勝ってもらわないと困るしね。つまり本当にクソ。

『終わりの花』 皆月蒼葉

 艦隊これくしょん二次創作。電子版が出たので。pdfですが、epubは無理そうな作りなのでしょうがない。一応kindleでも読めました。

 面白すぎて艦隊これくしょんのアカウント23個つくりました。感想を書くと大体ネタバレになりそうな話ですが、バレるべきネタを多分2割位しか自分はわかっていないだろうと思われます。けど2割位しか自分にはわかっていないだろうということが分かる程度に丁寧に書き込まれている。元ネタへのこだわりの偏執が読み取れる。良いですね。

 歴史は詳しくないのですが、一つだけぴんときたのはあの島の地勢とか料理とかです。じっさい明日葉の天ぷらはうまい。島寿司も。すごいなーと思ったらあとがきに行ったことないとか書いてあったので艦隊これくしょんのアカウント全部消した。

 仕掛け的にも超絶巨大陰謀とかいう感じでもなくむしろ小さくまとめていて(そもそも深海潜艦の正体とか陰謀とかいう二次創作にしておきながら国家世界の運命がかかってる規模になってないのバランス絶妙すぎませんか)、なんか無駄に死ぬわけでもなく、かといってヘラヘラしているわけでもなく、結局のところ私がやりたいのは歴史改変ですという感覚が伝わってきました。最終章の演出はさすがとしか。あの書体文体。歴史好きな人はもっと艦隊これくしょんのアカウントがたくさん作れる作品だと思います。

『海を見たことがなかった少年―モンドほか子供たちの物語』 Le Clézio   豊崎光一・佐藤領時訳

 何しろ夜が明けるだけで4ページほどかかったりするのでかなり読みにくいのですが、しかし何年かぶりにもう一度読んでみると最高案件であると言わざるをえない部分もあり、おすすめです。通底するのは子供の視線、太陽の反射、原野の上を飛ぶジェット機。比較的読みやすく自分がいちばん好きなのは「リュラビー」という話でこれはリュラビーという女の子が学校にいくのをやめる話です。もう一つすごいのが「牧童たち」という話でこれは牧童たちが出てきます。さすがにその説明はひどい。この本で登場する子どもたちは皆、透明感にあふれています。川本三郎の解説にも書いてあるけれど、リュラビーやガスパールは本当に透明な存在にはならず、あるいはなれず、最後にはこちらの世界に帰ってきてしまうので、その寂しさがまた好きなのかもしれません。