『新世界より』 貴志祐介

 面白かった。一気読みでした。設定をむやみにばらまいて世界観を醸成しているように見えて、実際は殆どがちゃんと伏線なんだよなー。不安を煽る感じとか、気持ち悪さとか、あーやっぱり的な絶望感とか、非常にうまい。ディストピアと超能力まではあっても人工進化も乗せてくるのはあんまり読んだことなかった気がする。確かに人類が本気で超能力に目覚めだしたら能力者だけを集めた学園都市を作ってそこでハーレムラブコメをやっている場合ではないのだ。ファンタジーなのかSFなのかというとホラーなのかもしれない(上巻で展開されたような大人たちへの疑念が、下巻にいくと彼女も大人になって体制の打破にはつながらないあたり)。ホラーの中にPanasonicとTOSHIBAが笑いを与えてくれる。これだけひどいことになってるのにメイドインジャパン健在かよ。

『盤上の夜』 宮内悠介

 ボードゲーム(囲碁、チェッカー、麻雀、チャトランガ、将棋)を題材にしたSF。麻雀だけ、ほんの基礎知識くらいはあったほうが読みやすい気がするが、基本的にはゲームの中身が問題になるような描写はほぼない。

 こういうSF読みたかったなーというところをえぐりこんでくる良作でした。というかSFなのか? よくわからないですが”このジャンル”とでも呼ぶべきこのジャンルが好きです。エンタメ小説として最もよくできているのが麻雀回の「清められた卓」と思いますが、これはもうなんかSFと呼ぶとウソだしミステリと呼ぶのも反則っぽいので、”このジャンル”ということになりましょう。人智を超えるものというか、天才というか超越というか、そういうものを扱うのが”このジャンル”なのかもしれません。ノーマル人類各位に於かれましてはもっと蹂躙されてほしいものです。そういう意味では表題作「盤上の夜」と、この連作短編の終局である「原爆の局」が好きです。小説っていいよねーと思います。囲碁も勉強したいな。