【感想】『ゆたにたゆたに半透明/地下鉄東西線爆破レモン』 雨下雫/小島宇良(C1講義室)

 第二十五回文学フリマ東京にて入手。入手の経緯は既刊の記事の通り。

 両A面仕様。これも表紙すごく良いですね。

『ゆたにたゆたに半透明』は、ファンタジー……か? という感じの小説。前作と二作を読んで通ずるところは無用者の系譜(読んだことない)なんでしょうかね。『偽付喪神夜行絵巻縁起』では役割のないガラクタの付喪神だったのが、本作では透明に漂うだけのクラゲ野郎と。話の運び方としても結構似ていると思いますが、本作は「田浦の君」が登場するあたりからぐぐぐと引き締まります。なんだよこの妖怪おばさん(おばさんという描写はありません)。好き。あとは道化だった無用者が精神的にダメージを受けてシリアスになっている様子を見た主人公が動揺してしまうっていうシーンも好きです。めっちゃクオリティ高いと思いますこの小説。

『地下鉄東西線爆破レモン』は、タイトルが出落ち感ですがタイトル負けしてないですね。ざっくりいうと地下鉄東西線爆破レモンの話です、としか言いようがない。両A面といいつつ分量的にはこっちは本の2割以下だと思いますが、よくまとまって独特の雰囲気を残していく短編でした。作品を読むに、この作者の方はなんかなんでも書けるタイプなんだろうなと思います。田村岬さんかわいい。シチリア産のくだりが好き。

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