『百年の孤独』 Gabriel Garc´ia M´arquez 鼓直訳

 やばすぎる小説。これが南米マジックリアリズムの爆発か。ホセ・アルカディオ・ブエンディアの息子がホセ・アルカディオでその息子がホセ・アルカディオだけどややこしいからアルカディオと呼ばれていますって、ややこしいと気づいているなら名前を変えろ。ブエンディア一家の無数の物語のミザナビーム。途中でノーパンノーブラファムファタールが空を飛ぶシーンもあるぞ。長くて読むのは大変、ずっと殴られ続けて疲れたけれど、終盤が本当に圧倒的だった。これだけ無数のパーツを連打しつつ最後にはまとめ上げてくるの本当にすごい。

『TOKYO YEAR ZERO』 David Peace 酒井武志訳

 やばすぎる小説。かなり長くて重いが、結構一気に読んでしまった。面白い。

 意識の流れ系だと解説に書いてあったけどそういうジャンルでしたっけ。まあ意識の流れであることには間違いないが。ひたすら挿入される意識、反復、変奏、狂気。一応トリック的な要素があったが、まあ途中からバレてるし、わりとそっちはどうでもいいと思う。警察小説とかノワール小説的な文脈で読もうとしたらなんか違うとなるのではないか。重要なのは東京の闇(この暗黒、暗澹感はすごい)と主人公・三波のこの意識、心理、狂気でしょう。お前痒いところ掻きすぎなんだよ。ガリガリ。自称通りの人間は誰もいない……。

 

『改変歴史SFアンソロジー パイロット版』 曽根卓・伴名練(カモガワSFシリーズKコレクション)

 第二十六回文学フリマ東京にて入手。超おもしろかった。パイロット版だそうですが完成版はマストバイなのではないでしょうか。

『緑茶が阿片である世界』 曽根卓

 タイトルで出落ち。緑茶が阿片であるという世界で、緑茶について解説した本の訳者あとがきという体で綴られるテキストは、前半は純粋に改変歴史読み物として次々繰り出される小ネタに笑いながら読み、後半の転調でまた笑える。首都のとこが地味に一番じわじわ来た。この読後感は高級茶はごくごく飲めるみたいなやつですよ(高級茶飲んだことなし)。

『シンギュラリティ・ソビエト』 伴名練

 なにこれめっちゃ面白い。アメリカの宇宙開発にソビエトが対抗せず、代わりに人工知能を開発、シンギュラリティに先に到達した世界の話。ソビエトの人工知能ヴォジャノーイと、それに遅れる形で西側諸国が創った人工知能リンカーンが、人類を置き去りにして戦いを続け、人間は駒以下の存在に。シンギュラリティとディストピアとサイバーパンクと共産趣味とかなんかそのへんのものが投入された最高に楽しい小説でした。党員現実とか案内役レーニンとかワードが一々面白いし、そういった面白いものがしっかり後で回収されていくのも気持ちがいい。ともかく読んで楽しかったです。

『春よりつめたく、小春よりあたたかな/セファイドの残光』 雨下雫/小島宇良(C1講義室)

 第二十六回文学フリマ東京にて入手

 両A面仕様。バランスの良いコンビで素敵です。二本ともすごく楽しめました。

『春よりつめたく、小春よりあたたかな』は、ダメになりきれない感じの主人公が、不思議系女子といちゃつく話……なのか? 幻想描写というか、夢か現か幻かの描写は筆力を感じました。小春はかなりやばい感じがしてこのやばさを演出できているのがすごい(語彙がない感想)。「あははは! あつかった! あつかった! あついでしょう?」のところが最高に好きですね。こう、無邪気かつ妖艶みたいなのが好きなのだろうか。なんかそう言葉にしてしまうと身も蓋もないが。もっとあたためすぎてくれ。何気に横浜小説であるのもポイントだと思いました。

『セファイドの残光』は、だらけ気味の大学生が出られなくなる話、というと既視感はありましたが、田村さんが可愛かったので良かったです。おれもシーパラダイスでイルカが見たい。バナナミルクも飲みたい。この敬語女子は強すぎる。くまのキャラクターも良いですね。そしてこれも横浜小説だ。あとがきによると既刊の話と関係性があるようですが、『地下鉄東西線爆破レモン』以外は読んでいないので、機会があれば読んでみたいと思いました。

『日本列島妖怪短編集 もののけの国』 青砥十(眠る犬小屋)

 第二十六回文学フリマ東京にて入手

 ゆるふわ妖怪小説とのことで気になって手に取りました。うわぁゆるふわ妖怪小説だ。めっちゃ良かったです。

 十六都道府県について、各所のご当地妖怪が絡んだ短編小説が入っているというもので、その大半が『後輩書紀シリーズ』。不思議なものが見える物知り後輩書紀のふみちゃんと、そのお世話係で理屈屋のセンパイ会計数井くんの話。基本、天丼で安心して読める。センパイ、違います。安定感ある。好き。テイストとしては日常の謎っぽいところがあるので日常の妖怪とでも言うべきジャンルなのだろうか。妖怪シリーズとは言いつつ、妖怪ハンターみたいに妖怪目当てに山奥に来たぞみたいなそういう話にはしていないのがなんか良いなと思えました。中学生がそんな頻繁に全国旅行できないし。文フリで偶然見つけたので認識してなかったのですがこのシリーズは既刊もたくさん出ているようです。

 途中途中、シリーズ外の独立した短編が挟まりますが、それはゆるふわから打って変わってちょっと怪談っぽいものがあったりと、多彩。一冊で見たときに良いアクセントになっているように思いました。

 岩手の話が一番好きですね。表紙にもなってるし、一番優遇されている……。実際、47都道府県で妖怪力を比べた場合、岩手は遠野物語の時点で段違いに強いのに、宮沢賢治まで動員されたら勝てるわけないだろと思った。あとは大阪の新鬼劇がめっちゃ笑えたので楽しかった。骨バラバラはずるいやん。