『にんぎょばなし』 戸田鳥

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 人魚にまつわる5つの掌編。人魚の概念は作品間で個別、かと思いきやつながりを感じさせるような話もあったりして、全体としてのバランスと言うか雰囲気が魅力的でした。『人魚とダンス』がおはなしとしては一番好き。『竜宮』がここに入ってくるのもアクセントとして良くて楽しい。ハコフグほしい。

『筺底のエルピス 6 -四百億の昼と夜-』 オキシタケヒコ

 いま最も熱いシリーズ継続中のSFラノベ。今回もまあ「は?」感がすごいから今すぐ全人類が読むべき。前半はまあなんだかんだ言って順当というかなるほどねという感じはあったけど、後半はだからこそという形でこのクリフハンガーは良すぎるし、二秒以内に続刊を出してほしい(二年くらいかかりそう)(勘弁してくれ)

『占領都市―TOKYO YEAR ZERO〈2〉』 David Peace  酒井武志訳

 やばすぎる小説の二作目。前作は小平事件、今作は帝銀事件。事件そのものの闇の深さとして、帝銀事件はより闇が深いということもあって、前作で見られた狂気の表現は引き続き研ぎ澄まされつつも、より事件そのものの描き方にシフトしているように感じた。前作は、事件を捜査する刑事の抱える秘密や周囲を取り巻く東京の闇の印象が強かったが、今作は事件そのものを『藪の中』方式で語り闇を深めていく。『藪の中』だなこれ、と思った時点で大体読めてしまうことではあるが、前作のようなミステリ的仕掛けはなく、闇が深くなって終わる。でも最後のオペラパートすごいですね……。三部作の最後は下山事件とのこと。まだ出てないっぽいが。

吸血鬼はなぜ鏡の中で上下反転しないのか?

【百合文芸】「吸血鬼はなぜ鏡の中で上下反転しないのか?」/「笹帽子」の小説 [pixiv]

 上記の作品で、『コミック百合姫×pixiv 百合文芸小説コンテスト』に参加しました。

 応募要項に「女性同士の交流の中で生まれる、特別な親愛が描かれた作品。思わず口にしたくなるようなセリフや、心に沁みるシチュエーションに出会えることを期待しています」と書いてあり、こういうのであってるのかというと多分あってない気がするので、それはいいんですけど、まあ書いて楽しいから良いんじゃないかなという気持ちで書きました。誤謬って思わず口にしたいからあってるかも知れない。

 すでに応募作品が450超となっており、それがコンテストとして多いのか少ないのかは知りませんが、しかし短編の百合小説が大量にあるというのは良いのではないでしょうか。頑張って渉猟していく。おすすめ情報があったら教えてください。あと小説書く人は今からでも間に合うから一日三万字書いて投稿してください。コンテストの推奨文字数は二万字以内だけど。

『宝石の翼 セリエルの空』 藤あさや

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 第二十七回文学フリマ東京にて入手。同じSF列であらすじで気になっていたのと、拙作の感想をいただいたことがあったので。上記はKindle版。

 ”臍玉”を持つ選ばれた少年だけが操ることのできるエーテル機関を搭載した戦闘機で戦うファンタジー架空戦記モノ? 知識がないのですが航空戦とかの設定も結構深いみたいなのでそっち系の人も楽しめるんじゃないかと思います。がっつり長編(B6版二段組約160p)ですが非常に丁寧な作りで冗長さはなく、最後まで楽しく読むことができました。お話の型的には悲劇っぽいものの、重くなりすぎず、充実した読後感。

 面白いなと思ったのがSFっぽさが(特に序盤は)全面には押し出されていないところで、エーテル機関は奇跡や魔術の扱いであってその機序は云々されないというバランスの中で、しかし前半で挿話的に語られた決定論や未来予知や多世界解釈の話が後半で回収されてくるというのが良かったです。また、タイトルにもなっているセリエル音楽(というか十二音音階)がガジェット的にうまく活用されているのも良いなと思いました。関係ないけど最初メタルってテルミンで弾く曲がメタルなのかと勘違いしてすごいキャラだなと思ってしまって勝手に楽しくなってた。