雨月物語SF『雨は満ち月降り落つる夜』 #文学フリマ 東京にて (1)

【追記】Kindle版を配信開始しました!!

 

 前後編に分けて告知記事を書きます。

 特設サイト:雨は満ち月降り落つる夜 – 雨月物語×SF

この本はなんなのか?

『雨は満ち月降り落つる夜』は、近世怪異小説の名作である雨月物語の9編をSF的に再解釈する小説合同誌です。雨月物語の要素を現代や未来に置き換えSF的に仕立てた小説や、雨月物語の世界と連続性をもった近未来を描いた小説などを9編収録しています。

 雨月物語の評論とか解説をするものではなく、あくまでSF小説の合同誌です。

 2019年5月6日(月祝)、文学フリマ東京にて頒布します

雨月物語を知らないと読めないのか?

 全くそんな事はありません。聖書をちゃんと読んでないとドストエフスキー読めないのか、というと別に読めると思いますし楽しめると思います。各種元ネタ知らなくても東方ProjectやFGO楽しめます。そういうレベルです。

 また、たとえば雨月物語の『吉備津の釜』を読んだことがなくてもネット怪談の『八尺様』は知ってるとか、そういう無意識下での影響があるはずなので大丈夫です(?)。詳細はこちら

どうして作ったのか?

 以前から古典文学とSFの相性は意外に良いという感覚があったのですが、雨月物語というのは影響力も強いし9編というアンソロジーにちょうどよいボリュームでもあるしということで企画しました。Twitterでやりますと告知したところ反応を示してくださった方に声をかけ、制作に至りました。

どんな作品が収録されているのか?

 それではここからネタバレ無し感想を交えつつ紹介していこうと思います。

1.『ノーティスミー、センセイ!』(笹帽子)

 拙作。冒頭が主宰なのはどうなんだというのはあるのですが、作品割当を先に決めたら自動的に原作の順序で掲載することになるよねという形で決まりました(原稿集まってから掲載順決める普通の合同誌と順序が違うな)。ヒーロー西行法師と、日本三大怨霊の一人である崇徳天皇の論争を描く歴史異能バトル『白峰』から遠い未来、ポストシンギュラリティの京都で再び二人が対峙する話に、サイバーセキュリティの啓蒙要素を加えてついでに女子小学生を足しておいた小説です。セキュリティは本当に基礎的なところで足をすくわれるので気をつけてください。

2.『飛石』(cydonianbanana)

 義兄弟と交わした再会の約束を違えぬため、自死し死霊となって駆けつけるという友情を描いた怪異譚『菊花の約』をメタ的に二次創作し、物語への没入者としての幽霊をエヴェレット的多世界解釈と絡めて仕立て上げた温泉小説。創作物に登場した舞台を訪れるいわゆる『聖地巡礼』要素と、自分が創作をしようというときにその舞台を訪れる『取材』要素を紀行文学的に配置し(温泉入りたかっただけ説もあるが)、最終的には創作とは何かという高みを目指すハードSF。射程の長さに脱帽。

3.『荒れ草の家』(17+1)

 戦乱に巻き込まれ、家に妻を残したまま七年もの長きに渡り帰ることができなかった男が、死んだものと思っていた妻と再会する幻想的な怪異譚『浅茅が宿』を踏まえ、家に侵入して閉じ込められてしまった空き巣と、家主の帰りを待ち続けるロボット掃除機とスマートスピーカーと蟹(?)たちの奇妙な生活を描く作品。前2作が原作を歴史としてあるいは創作物として踏まえた小説であったのに対し、本作は原作『浅茅が宿』の内容が直接引かれることはなく、しかしそのテーマである「帰りを待ち続ける」ことが現代的なSFガジェットを用いて掘り下げられ、最後に作者独自のアンサーが与えられており、不思議な感動があります。ロボット掃除機やスマートスピーカーや蟹(?)が可愛く思えてくること間違いなし。

4.『回游する門』(Y.田中 崖)

 夢で出逢った魚の絵を一心に描くうち、自らも魚となって泳ぎ回った僧の不可思議な体験を描いた夢幻小説『夢応の鯉魚』の、遠未来の後日譚を描いた作品。三次元的に増殖する巨大な機械都市を舞台に、名前が数字で表記され機械化された登場人物たちが繰り広げる冒険は未来SFアクションで、どこへ向かうのかと思いながら楽しく読ませたあと、その終着点はまさに近世文学のSF的解釈。魅力的なキャラクター像があり、主人公三人がわちゃわちゃしてるのが楽しい。都市が増殖する系SFが好きな方にハマる作品です。

 

後編はこちら

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