『幸運な子供たち』 まるた曜子

 第8回Text-Revolutionsにて入手

 文庫版約300ページの長編医療SF小説。墜落事故のただ一人の生き残りの少女を主人公に、彼女の命を救った医療技術を中心に据えつつ、その半生を描いた作品。医療機器《オートクチュール》やそこに新生児から入っている《EH》まわりの設定や、舞台となる世界(海面上昇後の世界。主人公は第二深圳出身、主要な舞台はセネガルなど、出てくる地名にそそられる)のSF感にしっかりとした強度がある。ただ、世界を揺るがすような出来事が起きるわけでもなく、山場みたいなものがあるわけでもなく割と淡々と、静かに(まさに『漂う』感じ)主人公ルォシーの過ごす日々が綴られている。なので、「先が気になってどんどん読んでしまう!」みたいな方向性と真逆で、普通そういう作品で300ページ読ませるのって難しいと思うのだけれど、不思議な魅力があって読み続けてしまった。すごいと思う。主人公の大人になれてない感じとかが一人称文体でうまく表現されているし(主人公がかわいいのは強い)、周囲の大人たちも魅力的なのが良い。