ねじれ双角錐群『アンソロポエジー』Kindle版配信開始

 2018年秋の文フリ東京にて頒布した、ねじれ双角錐群『アンソロポエジー』のKindle版がついに出ました!

「人類滅亡後を舞台に」「人類以外を語り手とする」「語り手は何らかの手段で人類を観測している」という条件で書かれたSF短篇小説集です。つまり、語り手となる人類以外とは一体何者か、からそれぞれの特色が出始めることになります。ラインナップは上記のツイートに貼り付けた画像をご覧ください。どの作品もアンソロでありポエジーに仕上がっているかと思います。ちなみに、一部の作品に組版上の演出というか、特殊な組版がなされていたために、リフロー型電子書籍の発行が危ぶまれていましたが、強引に解決されました。人類がいなくなった今、多少の強引さが必要とされています。

 ねじれ双角錐群は今年の秋の文フリ東京に向けて雌伏して時の至るを待っておりますので、ぜひメンバーに養分を与えると思ってDLし読んで長文感想を書いてください。よろしくおねがいします。

『息 -Psyche- vol.3』 アナクロナイズド・スイミング

 第二十八回文学フリマ東京にて入手

 特集「夢オチ再考」ということで、夢オチをテーマにした一冊。ほぼ小説、若干論考。

『夢オチ探偵』17+1

 任意のタイミングで『目覚める』ことにより難事件を夢オチにして強制解決する能力を持った名探偵の話。探偵モノのテンプレギャグと、夢オチを前提とした出オチ設定で話を進める力技も好きだし、そこから来てラストが何故かセンチメンタルになるのすごく好き。執筆者コメントにある通りで、合同誌の性質上、夢オチであることは予め読者に示されている状態で何を書くかと考えた時に、この設定には必然性があって、でもそこで独自の世界が描けているのが良いと思った。

『逆夢』17+1

 ありがちな夢と現実の組み合わせが反対になっている夢を見るという話なんだけれど、不思議な終わり方をしていて、これ結局夢なのか、というのがよくわからない、混乱させてくる作品。夢オチの一系統としてたしかにそういう「夢か現か」的なのがあり、作為的にそれを使いながら夢の話をしていくという作品なんだろうなと思う。

『ふたりがキスしたら即夢オチする連作短篇集(百合編)』みた

 タイトルでオチてるので好き(?)。タイトルがすべてなんだけど、夢オチと連作短編ってめちゃめちゃ相性が良いなと気付かされた。めちゃめちゃに話広げていって最後戻ってくるの好き。

『巡夢あるいは「夢見」の素描』渋江照彦

 夢オチが構造上夢と現実の二項対立であるのに対しそれを外しにいくという意欲作で、とても面白い構造だった。大学の授業のシーンあたりからどんどん不気味になっていくというか、得体のしれなさがうまく演出されていて良かった。

『(愚考)虚構信者よ浮遊しろ 〜乱歩の短篇から夢オチをかんがえる』月橋経緯

 江戸川乱歩を題材に夢オチについて考える論考。乱歩のネタバレが含まれるということで、残念ながら読んだことなくて今後読まないとも限らないのでちゃんと読んでおりません。読みたい。

『夢オチの話をしよう』淡中圏

 論考と小説のハイブリッド。夢オチについて考えながら夢オチの小説を書いたり、夢オチの小説を書くことを考えたりする話。これも読み進めていくにしたがって、メタ展開含めて大きく物語の次元が広がっていき、最後に戻ってきて着地するという話で好き(多分自分がそういう構成好きというのもあってこういう感想がやたら多くなるのだが)。ツイートしてるとこで笑った。

『bnkrR vol.16 平成』

 第二十八回文学フリマ東京にて入手

 テーマ『平成』ってめちゃくちゃ難しくないか、と思ったら実際一冊の1/3くらいしかテーマにしたがってなくてちょっと笑った。というか具体的には短編3本で、松永肇一『AI世界をキモオタと旅する』は元号切り替えをネタにしたサイバーSF。ベイジアンフィルタの設定が厨ニっぽいのが好き。塚原業務『平成の塚原』は、平成四十二年に迷い込むという異世界パロディミステリ(?)。過去作品『奇祭探偵』のスピンオフで独特のゆるい空気が良い。城島はむ『平成サルベージャー』は失われた青春を取り戻そうとする青春時間SF。ネトスト後輩女子すき。

 その他、平成に特に関係ない通常営業の小説と、エッセイ、レビューを収録。その中でひときわ良かったのが、なんかよくわからない得体のしれなさがすごかった『霊話』。平成特集が終わって霊話が始まるダジャレ感(?)。怪談ショートショートが連作されているのだが、筆者とかの情報が一切書いてないのが謎感を高めていて良い。『佐南弁』『吹雪の日の妹』『目玉』が特に好き。

『ヨハネスブルグの天使たち』 宮内悠介

 落ちる少女ロボットSF連作。ロボットの使い方が面白く、連作の繋がり方も絶妙な具合だったように思う。今度はこう落ちるのか、みたいな。落下を書きたいというところにSFを後付していくような感覚。というか設定は意味不明でツッコミどころ満載であり、真面目に考えたがる人は受け入れられないと思うから、一般的な尺度で言うとSFとしてはダメなんじゃないだろうかと思った。しかも「あんま考えなくていいですよ」みたいなポーズを発信してないからな。でも個人的には別に問題なく好き。舞台の異国感もよい。ヨハネスブルグ、ニューヨーク、アフガニスタン、イエメン、東京。その舞台であることに必然性があるかといえばよくわからないし、ニューヨークと東京はともかく(しかしこの東京は今の東京ではないのだが)行ったことなんてない国にリアリティもよくわからないのだけれど、不思議な質感とか空気感みたいなものを漂わせることに成功している。

『凶鳥の如き忌むもの』 三津田信三

 刀城言耶シリーズの第2作。前作の『厭魅の如き憑くもの』がすごく面白かったので、そこの期待値からすると本作は若干もう一息ほしかった感はあるものの、絶対値で言うと十分良かった。伝奇・怪異的要素が挿話も含めて凄まじく、密室からの消失トリックも良かったと思う。が、『厭魅』のような圧倒的なラストの振れ幅を期待していると、そこまでは届かないという感じがあった。しかしこの次のシリーズ3作目の評判がえらく良いらしいのでそれに期待したい。

『こだわり/花の女』 雨下雫/小島宇良

 第二十八回文学フリマ東京にて入手。短編2編、両A面仕様。

『こだわり』は作者の雨下さんがあとがきで書いている通りファンタジー要素とかがないという意味ではこれまでの作品と毛色が違うような気もしつつ、個人的には流れている空気は似てるしそんなに突飛な感じは受けませんでした。上記宣伝ツイートでは「狂気」と言ってるけれど、実際そこまで狂気かというとそういう異常性は感じられず、蕎麦に関しては知らんけど一般的にこういう「こだわり」、誰しもなにかあるというか、共感できなくもないよねという絶妙なラインになっているのが読んでて楽しいのかなと思います。あと彼女の最後のツッコミも突いてほしいところを突いてくれる痛快さがあってよかった。

『花の女』は感情が高まると花びらを降らせてしまう女性を妻に迎えた男の話で、その感情で花がっていう設定自体はスーパーありがちというか、ツイッターとかに画像4枚とかで漫画ですみたいなやつにありそう(全く関係ないが、あの形式で設定だけみたいなやつあんまり好きではない)なんだけれども、でも時代背景であったり人物の掘り下げであったりがしっかり行われており設定負けしていないので良いなと思った。ソラと古賀の後半での出現の仕方が結構特色あると思っていて、古賀に関しては卯吉にとって不思議なつながりを感じる相手であり、同時にその死期も自然と受け入れているという心地よい距離感なんだと思うのに対し、ソラに関してはこの出方は怖いし、卯吉は普段何を考えているんだという感じがあるし、っていうかむしろ彼は千代以外の人間に全然興味ないんだろうなという想像なんかもしてしまい、それが妙に好感だったりする。短いシーンでいろいろ考えさせられてしまい、面白かった。

『深界調査記録』 もちくず倉庫

  第二十八回文学フリマ東京にて入手

「気になった現実の事件や物事を調べたノンフィクション」とのこと。四本の記事を収録。都市伝説、怪奇事件、未解決事件、邪教。もともとこちらのサークルの小説本(と無配本)が気になっていたのですが残念ながら行ったのが遅く完売されており、せっかくなので普段あまり買わないのですがノンフィクションのこちらを。

 都市伝説やネット上のウワサの伝播過程に興味があるので、実在する廃墟や現実の事件が薄められたり混ぜられたりしてネット上の都市伝説になっていく様を追いかけているレポートは(現実に人が亡くなっている事件がきっかけだったりすると、あまり楽しむものではないと思いつつ……)興味深く読みました。事件パートから都市伝説パートにいくときのぐっと位相がズレ始める感じがすごい。昔の個人サイトなんかのログがどんどん消えていくこの時代において、こういうのを調べてまとめるという地味な仕事も重要だよなぁと思います。

『SFアンソロジー WORK Upside Down』 グローバルエリート

 第二十八回文学フリマ東京にて入手

 宣伝画像とか、Webサイトとかがかっこよかったので気になっていました。文フリ当日も謎のユニフォームを来た集団が売り子をしており非常に圧があった。メンバー紹介などをみるとデザイン担当とか決まっていてすごいなと。

 7編のSF小説を収録。扉ページにかっこいいイメージの抽象画っぽいのが入っているのが素敵。それをめくったところに作品・作者紹介的なコメントがあるのは良し悪しかなと。情報としてはあったほうがいいけど、事前に読んでしまうと若干ネタバレ感もあり、作品を読んだ後に出てきたほうが良いようにも思いました。総じて面白かったので以下個別の感想を書きます。

『𝓢’』髙座創

 人類が計算機上の知性になった未来で、長大な時間や極小の距離を扱いながら話が進むSF。考えているシーンが長いと言うか、説明的な説明にかなりの字数が費やされているために、どうしても動きが少ない内容が続くんだけれども、そこからの反動としてのラストシーンが好き。最後の一行がすごく格好良い。

『新生物地理区サニーコート・マツダ』架旗透

 これは予告ツイートの冒頭部分を見た段階で一番面白そうだった作品(冒頭でのつかみがすごい。実際読んでもらうためにそれは重要なことだし、テラフォーミングの単語が予告ツイートに含まれる冒頭2pにギリギリ収めてあるのも狙っているとしたらとても上手いなと思う)。そして実際に面白かった。アパート「サニーコート・マツダ」にテラフォーミングが仕掛けられ、在来種の院生たちは放逐されるか帰化するかを迫られるという無茶な話で、その設定はSFなんだけれどやっていることはコメディであり青春モノ(?)という、とても楽しく読めるエンタメ作品だった。話の広がり方(というか広がらなさ)や終わり方もSF的というよりは青春っぽくて、それもまた好き。

『Upside Down』零F

 表題作。これメンバーで互選とかで表題を決めているんだろうか? そうだとすると結構面白い試みだなと思った。時間モノ。予告文に構造がどうとかと書いてあって冒頭の章タイトルを見たら大体どうなるかわかると思うけどそうなる話。切り刻む系は技術力がかなり必要だなと思って、本作は途中ちょっとサスペンスっぽい要素があったり人物を誤認させる(?)描写があったりするのが牽引力になっていたのが良かったなと思う。

『断末魔コンテスト』元壱路

 一般的な言葉遣いで言うとこの作品はあんまりSFではないと思うんだけど、読んでて一番楽しかったのはこれ。こういうタイトルで出落ち系の作品に弱いんですよね……。冒頭の真面目なふりをしているシーンからの数ページ後の落差で笑わせ(笑うだろあんなん)、無茶苦茶な話を展開していき、最後に冒頭の真面目っぽい部分まで回収してくる無駄のない構成、素晴らしいと思います。

『帰還者に向けたよりよい生活の手引き ――『第三章:コミニュケーション』』維嶋津

 一発ネタではありますが、この作品はかなり好きです。これは何が面白いかを書いてもネタバレにしかならないしなんとも言えないけど。ページを捲った瞬間の「そっちかー!」という笑い。やられました。

『AIライツウォッチ』東京ニトロ

 一番SFのイメージでしっかり読ませる小説で、すごく良かった。かなりの密度と疾走感でSF的近未来の社会が描かれており、謎あり、アクションありでクライマックスに向かって全力で盛り上がっていくので気持ちがいい。ドライヴ感があり強い。強いて言えば、最後の「続く」的な終わり方はちょっと「え?」となってしまう唐突感があったので、別に書かなくても前作読んでる人には伝わるからいいのでは……と思いました。でも前作がめちゃめちゃ気になってきたので読みたい。

『ミヤの眠り、私の朝』杏野丞

 合同誌の最後というポジションって、読後感を支配してくるので結構難しいと思うんだけれど、この作品はきっと最後に置くに相応しいと思います。7作中で一番静かで深刻なSFなのかなと思う。ラストシーンの静謐さが良い。あと、終盤のシーンで「誰か一人でも、この席に真体の自分を~」のところはSF設定を使いながら断絶がうまく表現されているなぁと思った。

『魂よ、忘るるなかれ』 寺岡敬

 第二十八回文学フリマ東京にて入手

 もともとtwitterでフォローしていたこともあり気になっていたのですが、シリーズ物なのかなと勝手な敷居の高さを感じていたところ、なんと今回スペースがお隣で声をかけていただき、番外編なので単独から読めますということで読ませていただきました。「歌で怪異を祓う少女」が活躍する話。日記を読み解いて怪異を知り、それが自分にも現れるという趣向の感染性っぽい描写が良かった。こういう怪異が出てくる場合、そもそもどういう存在なのかとか、その前はどこから来たのかみたいな設定を語るか語らないかって作風を大きく分けるよなと言う感じがして、本作では結局怪異がなんなのか全然わからない感じが(あえてそこは追求・説明しない感じが)、もう少し知りたいという思いもありつつ、番外編で一般人の目線で書かれている話だからそれくらいの塩梅がいいのかな、とも思ったりした。不破想良の能力の詳細とかもわからないが、なんか強そうで面白そうというのは掻き立てられるので楽しかった。関西弁なのにLINEの書き言葉だと標準語なのかわいいのでとても良いと思います。

『第一回異世界分子生物学会年会講演要旨集』

 第二十八回文学フリマ東京にて入手

 異世界における分子生物学会の講演要旨集という体裁で、異世界的な存在を科学的に紐解く。しかも本物の研究者たちが書いており、雰囲気がそれっぽくなっている。企画としてめちゃめちゃ面白そうなので速攻で買いに行きました。

 どれも面白かったが、気に入ったのをいくつかメモ。『ケルベロスの唾液由来アルカロイド誘導体の構造および生合成メカニズムの解析・黒川晶(第7 魔法大,魔法生化学)』はサベルニンとかオルフェウスとかの小ネタがじわじわきてよかった。『害獣ノヴァのドラフトゲノム・Uta Tsutats(ホイ・ホイ大理,人類学) 』と『全ゲノム解析が明らかにするワモンゴブリンの特異な性的嗜好の起源・人鳥暖炉(スカイガイオン鳥人自治区立大)』の2本はこの企画の中でも文芸性というかエンタメ性が強く特に好き。他の作品は真面目に(?)分子生物学会に本当にありそうな内容を(いや行ったことないけど)異世界の生物に当てはめているものが多く、その「ありそう感」が楽しい中に、いきなり投げ込まれる上記二作のオチが好きです。巻末に松浪硝子の広告があり(ガチなのか??)、でもその住所の「異世界文京区湯島」でめちゃめちゃ笑ってしまった。