『息 -Psyche- vol.1』 アナクロナイズド・スイミング

 第二十八回文学フリマ東京にて入手

「恐怖と笑いの共存」をテーマとした短篇集。4編収録。このテーマめちゃめちゃ難しくない?

『ビギナーズラック』渋江照彦

 ビギナーズラックがありすぎる主人公という短編。冒頭部分だけでオチは読めるんだけど、それだけ様式美がよくできている完成度の高い作品。世にも奇妙な路線なのかなと思った(世にも奇妙な物語に特に詳しいわけではない)んだけど、確かに世にも奇妙な物語って恐怖と笑いの共存だよなと思った(世にも奇妙な物語に詳しいわけではない)。

『箸が転ぶ』17+1

 四作の中でこれが一番好き。箸の持ち方が悪いことを隠す話、という骨子はかなりコメディで、そこに「秘密がバレてしまったら」という強迫的な恐怖を投入。レギュレーションの「恐怖」を怪談ではなく人間関係で演出したのは上手いやり方だなと思った。最後オチでその恐怖がちょっと変質していくのも好き。百合じゃん。

『生まれなかった私』月橋経緯

 エネルギーがすごい。怪談的で趣味の悪い内容を書きながらギャグを入れまくることにより笑いも共存させてますというポーズを取っている。「驚きまじりの怒り!」とかめっちゃ好き。露悪的な冗長文体でこの分量になってくるとなかなか疲れてくる部分は正直あるんだけど、作者の側の作品に対する熱がすごいので最後まで読み切れる。

『夜歩くシミュラクル人間』弥田

 遡ってvol.1を読んで、原稿書けないメタ作品が最後にくるのはこのサークルの様式美なのだと知る。物語というのもの力を信じる上では(そして、文フリなんていうイベントに出しているということもあるので)シミュラクル人間の概念は面白かったし良かった。そういうの信じたいよね。テーマ的には原稿を落とす恐怖で最後まで行っても良かったという気も。