神待ちSF幻想合同誌『心射方位図の赤道で待ってる』 11/24文フリ東京にて頒布

 神待ちSF幻想小説合同誌『心射方位図の赤道で待ってる』を、2019年11月24日(日)第二十九回文学フリマ東京にて頒布します。スペースはク-39です。特設サイトはこちら

 文芸同人ねじれ双角錐群の四冊目の短編集です。今回のレギュレーションは「神待ち」。死語感がありますが、この令和の時代に改めて神待ちについて考えるという真面目な意味合いは特に無く、「神待ち」という単語から着想していれば何でもありというレギュレーションなので、実際集まった作品を見ていくと思わぬ飛躍があって楽しいものです。様々な神待ちがある。以下、収録作品をざっくりと紹介していこうと思います。

✊「神の裁きと訣別するため」 murashit

箇条書きで語り尽くせる着想を散文によって展開するのは、労のみ多くて功少ない狂気の沙汰である。よりましな方法は、あらゆる事象を項目として書き出して、並列に差し出すことだ。より論理的で、より無能で、より怠惰な筆者は、じゃんけんにかんする完全でしかし短いリストを書く道をえらんだ。

 タイトルはアルトー、あらすじはボルヘス、本文はmurashit。あらすじが示唆している通り、この小説は通常の散文ではなく、箇条書きです。遠近を自在に跳躍する独特の文体が短く箇条書きされ、じゃんけんを題材にしながら、ある存在を待っている主人公が描かれます。ズームインとズームアウトの律動感が素晴らしい作品。とりあえずこれだけでも立ち読みしに来ませんか?

🗻「山の神さん」 笹帽子

家出少女の神籬菜々は、神待ちアプリの暴走によりタイムリープし、大正時代の高校生・広瀬とマッチングしてしまう。下宿の部屋に泊めてもらうことなどできるはずもなく、代わりに広瀬と共に高みを目指す神籬だったが、背後には家出少女の時空補導を狙う魔の手が迫っていた!

 拙作。蓋を開けてみたら7作の中で最も「神待ち」をそのままの意味で使っています。家出少女を泊める側の男として絶対ありえなさそうなやつをもってこよう、と考えたら、女慣れしてない大正時代の旧制高校生という発想になりました。キャラ的にも文章的にも、絶対に出会わないはずの組み合わせで楽しくなりたいよなと思って書いています。

🔮「囚獄啓き」 小林 貫

地獄とは、とあなたは思索する。死、罪と罰、終わりのない苦しみ……あるいは閻魔。取り留めのないイメージが交錯する。あなたが創り出す「地獄」へと続く道は無関心で舗装されている。念入りに、決して剥がれ落ちることのないよう幾重にもそれを塗り固めるあなたの姿は否応無しに物狂おしく、また少しだけ滑稽でもある。

 しゅうごくひらき、と読むらしい。地獄を作るSF作品。神待ちの神を本来の意味に寄せて、地獄であったり救済であったりについて考えていく(読者に考えさせる)小説。ガジェットや技術によって現実的な条件がずらされたときに何が起こるのかというのを試していくのは正しくSFでありながら、結局は愛の話であるというのが、基本的には暗い話なんだけど光や救済を感じさせてくれます。この小説を読んで、地獄とは、と思索してくれ。

🦌「杞憂」 鴻上 怜

北米先住民族の少年杞憂は老呪術師焼き脛の命を受け、機能を喪いつつある〈ポアソンの分霊獣〉の夢へ潜る危険な〈ビジョンクエスト〉を決行する。純情報空間キウィタスで働く女子工学情報生命体の棗と茘枝は、客として訪れた杞憂と出会い彼の秘密へと迫るが……

 あらすじ文の情報量が多すぎて憧れてしまう。このあらすじを見て分かる通り、北米先住民族とかそういうジャンルと情報工学的世界観が交錯するタイプのハードSF、と見せかけて中盤から話が思わぬ方向に展開し、最終的に大団円で止揚される、圧倒的な物量とスピード感を持った鮮烈な作品。その飛躍を、ぜひ読んで確かめてほしい。

🍄「キノコジュース」 国戸 素子

俺は美少女魔法使いルシエが大好きな冒険者。大剣を振るって金を稼ぎ、いつかルシエに告白するんだ。でも最近、村のみんなの様子がおかしい。さらにルシエにも不穏な行動を見つけてしまう。村はどうなる?そして恋の行方は?俺は美少女魔法使いルシエが大好きな冒険者。いつかルシエに告白するんだ。

 あらすじを読むと「ん?」となると思うんですが、本文を読むと「んww?w」となります。ナンセンスというかシュールと言うか、ふざけてるのか本気なのかわからない、どこまでが狙っているのかわからない、ちょっとこの劇薬、濃すぎるからストロングゼロで割っとくかみたいな、そういう感じです、キノコジュース。読んで困惑しながら笑ってほしい。

🦀「蟹と待ち合わせ」 cydonianbanana

あたかも青く、青という言葉が失われてなお青みがかったような月下の海で、僕たちは今日も漂着物を探して歩く。人類が肉体を失う過渡期を生きる俺たちの日常と、私たちの《普通》。一人称複数の語りが重奏する、百年後のあたしたちによる克明な記録。

 まさかの、神待ちじゃなくて蟹待ち。SF界でも近年ニッチな盛り上がりを見せていると言われる蟹SFに彗星の如く現れた一作。人類が肉体を失う過渡期、個が失われた一人称複数の未来というハイパースケールなハードSFでありながら、それでいながらにして、綴られる音声感覚や南の島の旅情が心地よいんですね。かなり楽しく読めるからぜひ読んでくれ。

🐢「ブロックバスター」 津浦 津浦

ひたすらに大きくなっていく放浪大亀/大亀の帰還を待つものども/ものどもの王/その世界にあったもの/その世界にないもの/その世界の外にあるもの/どこにもないもの/どこかにあるもの/生きている私たち。

 僕がこの感想というか宣伝を書いている前提としては、各作品をPDFで事前に読んでいるということがあるわけですが、でもまだ刷り上がった本は手にしていないわけで、それでいうと本になったときの仕上がりが一番気になる作品がこれです。紙の本でないとやりにくい演出が仕込まれています。Kindle化したら演出方法が変わってしまうから書籍版を手に入れたほうが良いぞ。神、あるいは圧倒的な力を持ちすべてを変えてしまう存在としての大亀を待つ気持ちについての小説。並走する複数の語りが交差しながら盛り上がっていくのが素敵です。

 そういうわけで、11月24日は第二十九回文学フリマ東京に是非お越しください。ク-39で待ってる。