『ハサミ男』 殊能将之

 ネタバレ注意。

 叙述トリック系の古典(?)ということだけ聞いていた状態で買って積んであったのを忘れた頃に読み出したので、叙述トリック系だということを忘れて途中まで読んでたので、良い感じに取り組めて良かった。ここまで読んじゃった未読の人は忘れるまで積んでから読んでください。

 まあ違和感が確かにあったし、メインのトリックに関しては割とフェアだしよく出来てるんじゃないかなと思います。さすが古典化しているだけあった。ライターみたいな豪快さは嫌いじゃないのであれも全然オッケーです。しかし真犯人の動きにちょっと無理ないですかね。まあそんなもんか。最後のオチがめっちゃ好き。

『怪獣をつかう者』 森とーま

ゾンビつかいの弟子』の続編。BOOTHにて購入(通販休止中)。作品自体は小説家になろうnote等で読める。

 青春小説的な向きは変わらずで、神白と伊東のコンビを中心に、前作と違って神白側に焦点化して展開していくんだけど、前作のような社会の危機という大きな構造ではなくて(それなりに危ない話はでてくるんだけど)もっと身近な、二人の人間を描いている作品だった。『ゾンビつかい』の主人公だった時から比べると伊東君がちょっとやばいやつみたいにも見えてくるんだけど(?)、それってつまりそういうことで、伊東からみたときに神白がああ見えていて、神白からみたときに伊東がこう見えているという、人物像と心情の対照がすごく良い。そうはいってもダラダラと心理描写だけやるような小説では全然なく、タイトルの通り『怪獣』という謎を設定して、推理ありアクションあり、動きの多い(移動距離も長いぞ)展開で、『ゾンビつかい』の事件の残滓もしっかりあり、とても面白かった。『ゾンビつかいの弟子』で十分楽しませていただいたベースがあるので安心感を持って読めたのも大きいかもしれない。

リフロー型電子書籍化不可能小説合同誌『紙魚はまだ死なない』、テキレボEXに参加します

 記事タイトルが長すぎる。

通販サイトはこちら!!

 というわけで5月18日から31日まで開催される、 全通販型即売会【Text-Revolutions Extra】(テキレボEX) に参加します。テキレボは文芸同人誌即売会ですが、今回のテキレボEXは全通販型ということで、開催期間中に専用のサイトで本を選んで注文すると、まとめて届くというシステムです。何冊買っても手数料は300円固定、Aさんの同人誌とBさんの同人誌とCさんの同人誌をまとめて買ったらまとめて届くので個別に買うより送料もお得、私たちの暮らしを支えてくれている物流業界への負荷も少ない、そんな感じです。神システムじゃん。

 サークルささのは文庫は、スペース登別-05にてお待ちしております。登別、良いですよね。一番好きな温泉です。行ったことない。コロナが去ったら行こうね。頒布物は二つ。リフロー型電子書籍化不可能小説合同誌『紙魚はまだ死なない』と、女子大生百合/狐×狼/都市伝説伝奇ミステリ何でもあり長編小説『ドッペルゲンガー百合 12人狐あり・通暁知悉の村』です。いずれも文フリ東京の新刊のはずだったものなので実質新刊です。

『紙魚はまだ死なない』については、BOOTH通販分があっという間に完売してしまったため第二刷となります。なお、テキレボEXの会期の終了後に、残った分をBOOTHでも再販します。残らないということはさすがにないと思うけど。そこは皆さんの口コミにかかっています。

 改めて、どんな本なのかは公式サイトを見ていただくのが一番ですし、私からの紹介はすでに告知記事がありますが、すでにBOOTH通販分で本書を手にした方からありがたい感想もいただいているので、以下、感想の一部を掲載させていただきたいと思います。ただし、ネタバレを含むものもあるので、これはネタバレラインかなという私の想定を超えているものは、一番下に載せることにします。感想をくださった皆さん(載せ切れてない分も含め)、本当にありがとうございます!!


以下ネタバレあり系の感想です

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『ゾンビつかいの弟子』 森とーま

 BOOTHにて購入。いまは通販休止中のようです。前回の文フリ東京で配布されていたときに知ったもののそのときはもらい損ねたので購入させてもらいました。作品自体は小説家になろう等で読めるとのこと。

 ゾンビの話なのかと思ってたんだけど、まあ確かにゾンビの話なんだけど、いわゆる普通のゾンビとはちょっと違う存在であり、さらにそもそも別にそれがメインでもない、なんだろう、青春小説的な作品。面白くて、結構分厚いけど一気に読んでしまいました。色んな謎が解けたり決着がついたりして終わるというのではあんまりなくて、わからないことはわからないままなんだけれど、それが良いタイプの作品だし、キャラの動かし方が好きで、最終的にエピローグがめちゃめちゃ良いですね。この二人の続編も楽しみに読みます。

『タイタン』 野﨑まど

 お仕事小説。なにがお仕事小説だよ。

 いつもの野﨑まどで、すごいやつとすごいやつを会わせてどうなるか、っていう、『know』でもやったし、部分的には『2』でも『正解するカド』でもやったことを変奏している。「働く」とは、みたいな単純な言葉の意味を考えていくというのもいつもの作風だし、見せ場で慣用句をバラしてくるのもいつも通りで笑った。最後のオチは割と小ネタなんだけど、ちゃんと最初から仕込まれていたのがニヤニヤしてしまった。

 装丁も良い。

『図書館の魔女 烏の伝言』高田大介

 超弩級ファンタジー『図書館の魔女』続編。シリーズ特設サイトがあるので今すぐ訪問した上で、『図書館の魔女』1、2、3、4、『図書館の魔女 烏の伝言』上、下を購入して読め。急げ。

 前作から、一体どのような続編なのだろうと思っていたけれど、読み始めるとどうも全く違う舞台、全く違う登場人物たちで、前作の登場人物たちとの関係がどうなってくるのかわからないところから始まる。登場人物一覧の最後の方に高い塔のメンツが載ってるけど、なかなか出てこない。一人、この人はあの人ですよねというのがいるけど、それだけで、いやマツリカ様いつでるんだよ、早くマツリカ様来いよ、そろそろ上巻終わるけどマツリカ様まだ……いや、上巻終わ……おもしれえ!!!という感じでした。もともと最強の安楽椅子探偵みたいなところがあるマツリカ様が、しかし自ら世界を股にかけて打って出るというのが前作の面白さの一つでもあったと思うけれど、今作は正しく安楽椅子探偵として機能していて(かなりミステリ味ある)、良くも悪くも主人公ではないところにいる。代わって、では一人主人公がいるのかと言えば一人に定まるものではなくて、より群像劇的な方向が強化されているのかなと思った。それはテーマの一つでもある、裏切り者の話にもつながってきて、何重にもひっくり返す仕掛けがとても面白かった。そういう意味では『図書館の魔女』シリーズとしてはスピンオフであり、大きな構想の中では助走・準備ではないかと思われて、キリヒトも含めた次の話が早く読みたくて仕方がない。

 前作にも増して文章がかっこよく、度々知らない言葉も出てくるけれど、読んでいて気持ちが良い。冒頭、「初夏の黎明に吹きおろす山風は冴えざえとした気流に水分を孕み、頂を覆う這松の新緑あざやかな葉叢に一つひとつ鈴をつけるように露を結びながら低く重たく谷間に這いおりていく。」から始まるシーンだけで頭をぶち抜かれてしまう。ぶち抜かれませんか?

 最後がやっぱり手紙で終わるのが好き。続編超期待。