『WORK マンモス大合成』 グローバルエリート

 第三十一回文学フリマ東京にて入手(第八回大阪の新刊)。高品質なSFが載っている! 面白かったのであえて書くのですが、以下の感想には、核心的なところは避けるけどネタバレ要素あります。電子版制作中とのことなので、興味がある人はそちらを待って入手して読んだ方が良いと思います!

『マンモス大合成』 元壱路

 シリアスな展開と見せかけてナンセンスな笑いを誘ってくるバランス感が良い。ザ・闇医者の下りで既にめちゃくちゃ笑ってしまった。さらに無茶苦茶加減が小出しにされてエスカレートしてくるのがズルくて、黒幕が明らかになるあたりも面白すぎた。メロスみたいな感じ出すのやめてくれ。

『美しい未来のために』 維嶋津

 バイオエタノール事業の話と自動応答AIによる死者の複製という、現代から地続きでリアリティのあるSF題材を扱ってすごい社会派の真面目で硬派なSFっぽく始まるんだけど展開はむしろSFっぽくないというか、主人公がヤバい話だった。主人公を壊せるってすごいと思います。終盤の、え、これどうなるんだよというスピード感から乾いた笑いにつながる。パワーがある小説。

『ネコニンゲンのドグマ』 架旗透

 臓器たちの生体ネットワークが解明されて、という技術的なSF的想像力の設定から、それで医者の権威が失墜して看護師が仕事にあぶれ、という社会側の設定につながって舞台に反映されているのが面白い。ノラネコ、イエネコ、イヌネコあたりの無茶苦茶な設定やそれを強引に押し通す会話劇も良かった。ただ、ネコニンゲンが中心的な謎になって話が展開した割に、ネコニンゲンを単に説明して終わった感じになったのは物足りなく感じた。

『自分によく似た他人』零F

 エモかった。これハイパーエモ枠だ。これ感想言うの難しいけど好きです。再会して池袋が逃げなきゃいけないみたいなこと言ってさすがに意味不明で要町が引いてる感じになってるとこ好きで、でもそのあとで二人がクライマックスに向かうのが良すぎるでしょ。

『白の回路』 髙座創

 本書の中でこれが一番面白かった。創薬AIを悪用して違法薬物を作るというアイデアから、きちんと回答を出してオチを付けていて、社長や女子高生など周りの使い方も含めて綺麗にハマって無駄が無いのが好み。いや、オチは強引というか、んなわけないだろという超理論なんだけど(こういうのが嫌いな人もいるだろう)、でもそれがフィクションの良さだから良いと僕は思っています。