『夜になっても遊びつづけろ よふかし百合アンソロジー』

『夜になっても遊びつづけろ よふかし百合アンソロジー』に短編小説を寄稿させていただきました。

 よふかし百合をテーマとするアンソロジーです。『異色作家短篇集リミックス』、『日本探偵小説全集リミックス』といった尖ったアンソロジーを世に送り出してきた創作文芸サークル〈ストレンジ・フィクションズ〉の別冊、つまりナンバリングタイトルじゃないやつ(?)で、同サークル有志+ゲストによる作品が集まっています。ゲストで書かせていただきました。錚々たる執筆陣の中に載せていただきありがたい限りです。

 本合同誌はKindleにて配信され、チャリティ企画として収益は国境なき医師団を通じて Covid-19対策のために寄付されるとのことです。もちろんKindleという偉大なプラットフォームを使う以上ベゾスの取り分は発生しますが、それは彼が弟と一緒に月に行くために使われます。それもまた、よふかし百合ですね。

 以下、ネタバレを含まず、各作品・作者の紹介コメントを書きました。以下の告知記事の扉イラスト・紹介文とあわせてどうぞ!


織戸久貴「綺麗なものを閉じ込めて、あの湖に沈めたの」

 死体埋め百合はもう古い。これからの百合は死体沈めだ。そのための一夜の旅。本格よふかし百合ミステリ。

 織戸久貴さんといえば本作のようなミステリも書くし、SFも書く二刀流 (過去のストフィク作品もそうだし、創元SF短編賞 大森望賞『夏の結び目』なんかはダイナミック二刀剣戟だ) ……と思っていたのですが、本書では「ななめの」名義にて表紙と収録作多数の扉イラストまで描かれており、三刀流です。やば……。

鷲羽巧「夜になっても走りつづけろ」

 西にロードムービーあり、東に道中記あり、古来より旅というものは物語であり、移動というものは常に百合でした。だって心が動いたら百合だからね。つまり夜に移動したらそれはもう完全によふかし百合です。さらに本作には終末要素も感じられ、百合です。アメリカっぽい空気が好き。

 鷲羽巧さんの小説は私は今回の合同誌に参加させていただくまでに読んだことは無かったのですが、ミステリを主に書かれているそうです。あと読書量がすごく、読書メーターやブログに感想を書かれているのに注目しています。最近、上半期ベストとかいって載ってたリストが自分が上半期の読んだ全数より余裕で多そうだったので怖すぎました。

孔田多紀「餃子の焼き方。」

 紹介文が胡乱すぎる。犯罪オリンピックが未然に防がれて本当に良かった……。餃子を焼くミステリです。完全によふかし百合ですね。

 孔田多紀さんは過去のストフィクでの創作2作はいずれも元ネタというか史実の文芸作品に対するリスペクトを強く感じるものでしたが、本作は違った雰囲気(といっても元ネタはあるみたいですが)。この二人の続きの話も読みたいなと思わされました。良い距離感。

笹帽子「終夜活動」

 拙作です。ななめのさんに描いていただいた扉イラストがめちゃめちゃ良いです。女の子がすごくかわいいのになんか車のガラスがバキバキで最高。女の子がすごくかわいいのに車のガラスがバキバキな小説です。対戦よろしくお願いします。

鈴木りつ「夜はさらなり」

 漫画作品。陶芸の話。ここまで進んでくるとよふかし百合という同じキーワードに対してのアプローチの幅広さがどんどんと見えてきて、アンソロジーの楽しさがかなり広がってくるのではないでしょうか。曜変天目を見てるコマが好き。

 鈴木りつさんはイラストにおいて陰の表現がすごく魅力的、また漫画のお話は余韻の広がりが素敵だと勝手に感じているのですが、その特徴がよふかし百合にマッチしていて素晴らしいと思いました。あと、なんか異様な短時間で原稿が完成していたのが怖すぎました。瞬発力……。

九鬼ひとみ「新井さん、散歩をする」

 告知が出たときに「イラスト:矢部嵩」が界隈をざわつかせた作品。不穏! ニューロティック百合ホラー。ニューロティック百合ホラーというジャンルは夜と相性が良いので必然的によふかし百合ということになります。

 九鬼ひとみさんの過去のストフィクでの作品は不穏感がバリバリで好きだったのですが、本作もまた私を含むそれ系が好きな方にバシバシ刺さる作品だと思います。バシバシ刺さってください。

紙月真魚「君の手に花火が透ける」

 ネタバレを含まないというラインを、紹介文を超える情報を極力入れないということにしようと思うと、この紹介文から語れることはあまりないのですが、逆にこの紹介文から想像つかない広さを持った作品なので読んで欲しい。

 紙月真魚さんの過去のストフィクでの作品でもそうでしたが、短編の中で時系列的にも関係人物的にもかなり広い範囲を書かれていて、そこまで行くんだ、というところに連れて行ってもらえるのが楽しいです。本作もかなりの射程距離をもった作品だと思いました。

murashit「できるかな」

 真面目に紹介文を書いてくれ。紹介文を超えない情報としてはこの紹介文はWikipediaのパクリと思われるということくらいです。

 murashitさんとは「ねじれ双角錐群」をはじめとして同じ企画にて小説を書く機会を多くいただいてますが、毎回通底するmurashit節みたいなものがありつつ、しかし毎回違うボールを投げるのがすごいと思います。これも変化球。

谷林守「彼女の身体はとても冷たい」

 思春期の感情、関係性、そして感情です。つまり、よふかし百合だ。紹介文からどんなストーリーなのかは全く分からないと思いますが、雰囲気はわかると思います。答え合わせをしてください。

 谷林守さんは創元SF短編賞 日下三蔵賞「『サハリン社会主義共和国近代宗教史料』(二〇九九)抜粋、およびその他雑記」など、緻密な取材と複線のストーリーがきれいに噛み合う魅力を持った作品を書かれていると思います。本作も途中に入ってくる挿話の使い方と感情の動きが良い。

千葉集「芋よりほかにふかすものもなし」

 紹介文が一人だけ縦に長い。

 千葉集さんは創元SF短編賞 宮内悠介賞「回転する動物の静止点」で動物を回したり、ストフィクでは象が暴れたり等の奇想に溢れた作品を書かれていますが、本作もまさかの芋です。よふかし芋。そんなんありかよ。

 当初の告知第一弾で執筆者一覧に千葉さんが載ってなくて心配になった方がたくさんいらっしゃったかと思います。私もその中の一人であり、千葉さんに誘われて原稿書いたのにその千葉さんの作品が載らないなどということがあればもう生の暴力しかないというところでしたが、作品が出て本当に良かったです。


 以上、豪華10作品。ぜひどうぞ!