第二回かぐやSFコンテスト 最終候補作品の感想

 第二回かぐやSFコンテストの最終候補作品10作を読み、簡単な感想をメモしました。

 第二回かぐやSFコンテストはテーマ「未来の色彩」で2,000~4,000字のSF短編小説を公募する賞で、選考が完全匿名で行われています。審査員の最終候補作品の選定も匿名、大賞の選考も匿名、読者のオンライン投票による読者賞も匿名という試みです。なので最終候補作品の中に私もTwitter等で知り合いの方の作品があるかも、というかあるっぽいですが、どれがというのが分からないので、忖度無しの感想・投票になります。ドキドキですね。

 上記のサイトで最終候補作品を実際に読むことが出来ますが、並び順もページを開く度にランダム化されるなど徹底されています。ということもあるので、まだ読んでいない人は以下の私の感想(ネタバレを含みます)を読む前にぜひ公式サイトへ読みに行ってください。

 全体として、去年の最終候補作品よりも面白く感じるものが多かったです。というか去年も全部感想書こうと最初思ったんですが、自分の好みではない作品の割合が高くて、全部読みはしたけど感想書いてませんでした。今年はバリバリ感想書くぜという気持ちが最後までみなぎった。

 以下ネタバレ注意。順番は自分がアクセスしたときに表示されたランダム順。★を付けている作品が特に気に入ったので、この中からもう少し悩んで投票先を決めようと思っています。


ヒュー/マニアック

  • 素敵な設定だと思った。パーソナルカラー診断という既に現代的な題材をSFで未来・宇宙に飛ばしており、テーマに対して正統的な取り組みだと思った。
  • 最後の主人公(語り手)の設定開示は広義のオチ的なものとしてみると大きな効果は上げられてないかなと思った。良い設定なんだけどその設定の導入だけになってしまっているところがあると思った。
  • 本質的な評価に繋がらないと思うけど、ところどころ言葉遣いに違和感があった。たとえば、「杳として覗えない」は誤りではないけどたぶん一般的なコロケーションではないので、つんのめってしまう(あえてそういう言葉遣いをする特別な理由があるのかと注意が向けられてしまう)ところがあった。

スウィーティーパイ ★

  • 冒頭から言葉遣いに引き込まれる。世界観がめちゃめちゃ強い。牽引力があって良い。
  • どんどん引き込んで転換して最後の止揚とその先を予感させる終わり方。いいなー!
  • 怪我の巧妙、誤変換だ。

七夕

  • 描写の色彩感覚、祝祭感が良かった。
  • 不老不死(に近い状態)に関する設定の扱いが、メインなのかメインでないのか、ちょっと中途半端に感じた。
  • 全体的に何か象徴的な意味とか元ネタになる要素があるのかも、と良くも悪くも深読みしたくなる、が、考えてもよく分からなかった……。

アザラシの子どもは生まれてから三日間へその緒をつけたまま泳ぐ

  • 独特の説明しない謎さがあって良い。情報開示のバランス感。
  • 色彩というテーマがメインに置かれていないようで最終的にメインに帰着してくるの上手いなぁと思った。
  • 最後まで読んで、タイトルに戻ってこれどういう意味だって考えさせられる。

二八蕎麦怒鳴る ★

  • 冒頭部、これ翻訳狙ってるでしょ。あざといぞ。
  • ナノマシン二割からの変調すき。
  • 無茶苦茶な設定なんだけど多様性のためっていう一定の理由付けがなされてるのが自分の好みのラインですごくすき。
  • メッシュすき。
  • これはすごく気に入ったのでその上でのマイナスポイントを言うとすればオチが弱く感じたけど(なんか地口オチみたいなのが来るかと勝手に思ってた)、序盤中盤が面白かったらそれで全然OKのパワーある。

オシロイバナより

  • SFらしいワンアイデア掌編でクエスチョンとアンサーのしっかりした構成だと思った。
  • 色彩の使い方がトリッキーで良い。
  • ワンアイデアでコンパクトに終わってしまう感じもあり。

境界のない、自在な ★

  • 色を変えられる人工皮膚、というSF設定はまあ普通の題材だけれど、そこから「肌の色」、人種、文化圏、偏見、排斥……という広げ方はもう、見事だなと思った。そのあたりには無邪気だった「ヒュー/マニアック」を先に読んだことで(そちらの作品に瑕疵があるわけでは全くないが)余計に本作の巧みさというか、向き合い方が染みる。
  • 娘と学校に加えて曽祖母の使い方による物語の展開が良い。すき。

昔、道路は黒かった

  • 昔の道路は黒かったけど、緑(色)にして、でもそのあと緑(植物に覆われた状態)になってしまった、という設定自体は面白いと思った。
  • しかし読後感が悪くて、狙って悪くするにしてもその意図を測りかねるところがあった。昭和的(いや平成的か)おっさんに対する皮肉なまなざしを感じるけど、そのまなざしが未来的になっておらず、令和的な地が出ている気がする。たとえば冒頭部から舞台は少なくとも2030年以降であることが分かるんだけど、そこで書いてあるハラスメント要素は2021年現在基準っぽいとか。そうすると、2021年にこれを書いている作者の存在を向こう側に感じてしまって、その政治的な気配が自分は好まないところかと思った。

熱と光

  • 語り口が自分の好みではなかった。完全に好みの問題であり悪い作品じゃないと思うけど。
  • 自分の体質だと思っていたことの原因が医学によって分かって、思わぬ事実を告げられる瞬間、というのにはドラマがあると思うので、その題材は良いと思ったけど、物語としてはここで終わると物足りないと思った。

黄金蝉の恐怖

  • 恐怖というタイトルはミスリード? クライマックスのシーンは怖い感じになっており、最後にホラー枠が来たか!(単に自分の読んだ順番で最後だっただけだけど)と思って興奮し、しかしそこからオチが違う方向に行くので予想外の味が出てきて良かった。
  • 最後の急なSF、趣向は面白いけど、自分の好みにはあまりヒットしてこなかった。
  • 自分の誤読だけど、冒頭「彼女と過ごしたあの夏の記憶が蘇る」の「彼女」は直前のリュカを受けると誤読した上、そのせいかしばらくデビーの性別が判然としなかった(カタカナ表記によるところが大きいか。英語に翻訳したらbかvかで区別がつく? そもそも代名詞が日本語より頻出してすぐ分かるか)