エルデンリングの正ヒロイン・ラニ様の魅力と『束の間の月光』について

 エルデンリングのせいで新刊できませんでしたSS本に掲載したSS『束の間の月光』の背景となった、ラニ様考察です。

 エルデンリングのネタバレを含みます

魔女ラニとは何者なのか?

 エルデンリングにおける主要なエンディング分岐のうちの一つであり、もっともハッピーエンド感が強い正統派エンディング「星の世紀」エンドは、名実ともに「ラニエンド」である。

 大雑把な内容(私の解釈)は以下である。

 まず、前提となる背景として、

  • 魔女ラニは、月の女王レナラと、英雄ラダゴンとの間に生まれた子のうちの一人。
  • かつてのラニは神人であり、ミケラ、マレニアと共に、女王マリカを継ぐ次代の神の候補として二本指に見いだされていたが、二本指を拒絶した。
  • その際、死のルーンを盗み、自らの身体を死に至らしめ、棄てた。現在のラニは魂だけの存在であり、雪の魔女の人形に宿っている。
  • 以来、ラニと二本指は敵対している。
  • ラニは、自らの持つ律について、黄金ではなく、星と月、冷たい夜の律であるとしている。また、その律を地上から遠ざけたいのだとしている。

 その上で、ゲーム本編中のイベントの時系列をなぞると、

  • 魔女レナを名乗り主人公の前に突然現れ、「霊呼びの鈴」を渡してくる。
  • スリーシスターズの魔術師塔で再会すると「この再会は運命」などと言いながら自分に仕えるよう言ってくる。
  • 仕えると、他の配下(半狼のブライヴ、軍師イジー、魔術教授セルブス)を紹介され、共に永遠の都ノクローンの秘宝を探すよう指示される。
  • (この間に色々他のイベントとの交錯とかあるのだが省略)
  • 永遠の都のクローンの秘宝とは、大いなる意思とその使いを傷つけることができるという「指殺しの刃」であり、主人公がそれを持って戻ってくると、その働きに礼を言い、「やはりあの再会は運命」とか言いながら、「短い間だったがよく仕えてくれた」「もう行くがいい」と言って行方をくらます。
  • が、隣の魔術師塔「レナの魔術師塔」の封印が解かれており、そこにラニが身につけていた雪魔女装備一式が置かれていて、さらに転送装置が使えるようになっている
  • 転送装置を使った先、エインセル河本流に「小さなラニ」が落ちている。
  • 「小さなラニ」は細かいところまで作り込まれた魔女ラニに瓜二つの小さな人形で、何度も話しかけていると「ええい。お前、存外しつこい奴だな」「それとも、人形に話しかける趣味でもあるのか」とか言って会話できるようになる。
  • こんな姿は、誰に知られるつもりもなかったが、知られてしまったからには、逃がしはしないぞ」とか言われて再び協力させられることになる(誰に知られるつもりもなかった割には転送装置が用意してありましたが……)。
  • 曰く、この地にいる災いの影(=二本指の刺客)を倒せ。
  • 災いの影を倒すと、感謝と共に「お別れだな」と言われ、小さなラニから反応がなくなる。
  • が、同時に貴重品「捨てられた王家の鍵」を入手できる。
  • 「捨てられた王家の鍵」でレアルカリア大書庫の宝箱を開けると、「暗月の指輪」が手に入る。
  • 「暗月の指輪」は「月の王女ラニが、その伴侶に贈るはずだった、冷たい契りの指輪」だが、忠告として「何者も、これを持ち出すことなかれ」「夜の彼方、その孤独は、私だけのものでよい」と刻まれている(いや持ち出せる鍵をラニ様からもらったのですが……)。
  • 災いの影を倒した地点からさらにダンジョンを進み、ボスを倒す等諸々して進んだ先、マヌス・セリス大教会の地下に傷ついたラニがおり、主人公はその指に「暗月の指輪」を嵌める。
  • お前が、私の王だったのだな」「忠告など、無駄なことだったか」「私は夜空に行く。私の律がそこにある」「お前は、王の道を歩んでくれ」「そして、互いに全てが終わったとき、再び見えるとしよう」などの感動的な会話があり、コンシューマー版では唐突にラニ様が消えるが、オリジナル版(R18)ではここでシーンがある。
  • この状態でラスボスを倒し、ラニを召喚すると「星の世紀」エンドとなる。

 太字の部分で強調したとおり、この一連のイベントは、マッチポンプ感がすごいわけです。

 これでお別れだ的なことを言って姿を消し、けど手がかりを残しておいて、その手がかりを使って追ってきてもらうことの繰り返し誘い受けか?

 そもそも一番最初に魔女レナを名乗って接触してきた段階から、ラニ様が主人公に目を付けているのは明らかで(トレントはマッチングアプリ役なのか?)もうそこから先はほとんど全てラニ様の演出なのではないか、という気持ちさえしてきます。主人公がスリーシスターズの魔術師塔を訪れたことだけは直接的にラニ様の誘導がかかっていないので、だからこそラニ様はその再会を「運命」と呼び、やたらときめいているものと思われます(ラニ様は星見少女の直系であり、星辰とか運命をめちゃくちゃ重視しているため。恋占いとかやってそうだね。かわいいね)。逆に言うとそれ以外は全部仕込みだ。

 ラニ様は身体を棄てても元は神人、作中で主人公が直接接触するキャラクターの中では屈指の強キャラの部類に入るはず。実際、ルートによっては敵対した主人公を防御不可能即死魔法で殺したりする。マヌス・セリス大教会の地下で満身創痍だったのも、二本指とタイマン張って辛勝したと思われる状況。それなのに、ラニ様のイベント本編での動きは本来の強さを存分に発揮しているようには思われない。たとえばノクローンの秘宝を取ってこいと頼むのだって、自分が動けたら一発だろうし、まあ百歩譲って何かの事情で本人がノクローンを訪れることができないとしても、もうちょっと良い方法があるだろう。唯一働いているブライヴにまともな情報を与えることすらせずみんなでワイワイ、これもう部活レベルだろ。結果よりも過程を楽しみたいのか? 小さなラニ騒動も、最初はそれこそ二本指勢力との戦いの中で元の身体を奪われて小さい人形にさせられたのかとか思ったけど、どうも前後の状況をみるとそういう風にも思われず(ことが終わったらすっと小さなラニから離脱してるし、あとでまた元のサイズの人形で登場するし)、自分から進んで小さなラニ状態になって拾われ待ちしていたのではないかという疑念すらある。二本指本体と互角に戦えるくらいなんだから、二本指の刺客を撃退するくらい、きっと造作もないこと。でもラニ様はそうはしなかった。ラニ様のシナリオはそうではなかった。ラニ様は、小さなラニ状態で主人公に拾ってもらって、主人公に英雄的に災いの影と戦って欲しかった。そういう冒険が一緒にしたかった。自分が結ばれる相手、王との絆を深めるには、それくらいの冒険が必要だと思っていた。そういうことじゃないのか? かわいいね。

 以上により、今回書いたSS『束の間の月光』では、ラニ様が暗月魔術同好会での青春劇の筋書きを自ら描き演出するという話になっています。しかも、神人としての能力を失った、魔法も使えない普通の女の子として。いわば、小さなラニ状態だ。

「星の世紀」エンドとは何なのか?

 これは前節のラニ様考察よりも根拠情報が少ない、かなり妄想を含んだ内容になります。

 まずラニ様のセリフで、

  • 「私の律は、黄金ではない。星と月、冷たい夜の律だ」「私はそれを、この地から遠ざけたいのだ」「生命と魂が、律と共にあるとしても、それは遥かに遠くにあればよい」「確かに見ることも、感じることも、信じることも、触れることも」「すべて、できない方がよい」「だから私は、律と共に、この地を棄てる」
  • 「私は誓おう」「全ての生命と、すべての魂に」「これよりは星の世紀」「月の理、千年の旅」「すべてよ、冷たい夜、はるか遠くに思うがよい」「恐れを、迷いを、孤独を」「そして暗きに行く路を」

 というのが、この星の世紀エンドで起きていること。

 ラニの律が黄金ではなくて星と月、冷たい夜の律、というあたりは、ラニ関連、レナラ関連のフレーバーテキストでなんとなくわかるのだが(全部引用するのがめんどくさいからググってくれ)、もともとレナラは星見の少女で、あるとき満月に出会って月の女王になる(この「出会って」というのは満月を見たことの詩的な表現なのか、それこそエルデの獣、あるいはこの場合はアステールみたいな外なる神としての月との接触なのか、定かではない)。そのレナラとラダゴンの間に生まれたのがラニ。しかしラダゴンはレナラを棄てて女王マリカの方へ、黄金律の方へ行ってしまう。エルデンリング高校の校歌でもエルデンリングは「流れる星をすら律し」と歌われているが、エルデンリング=黄金律勢力が強すぎて、星と月の勢力は負けとるというのがこれまでの流れで、ラニは母を棄てたラダゴンは気に入らんし、二本指も気に入らん、というなか、このエルデンリングぶっ壊れのタイミングで神人ラニが二本指を蹴っ飛ばし、この世は黄金律の時代からいま再び月と星の時代へ、というのが星の世紀エンドであるというのが自分の解釈です。

 では具体的に黄金律の時代から月と星の時代へいくとなにが起きるのか、ですが、(ここから超解釈が入るぞ)『普通に死ねるようになる』のだと思っています。

 黄金律の世界では、人は死ぬと魂が黄金樹に回収されてなんか回るという(このへんよくわかってない)システムが作られており、魂が戻ってくるのが極めて身近に存在していたのではないかと想像しています。それに対してラニは「生命と魂が、律と共にあるとしても、それは遥かに遠くにあればよい」「確かに見ることも、感じることも、信じることも、触れることも」「すべて、できない方がよい」と言っており、狭間の地のどこにいてもすぐそこに見えている黄金樹ではなくて、もっと遥か遠く(月? 月だったら見えてはいるけどな)、人々に認識されないところで律は機能すればよいと言っています。

 これは律を棄てるとか、輪廻を停止するとかいっているのではなくて、あくまで気づかれないくらい遠くにあるべきだという話です。「月の理、千年の旅」とか言っているので、ちょっと強引な結び付けかもしれないけど、例えば死んでからその魂が月に飛んでいき地上に戻ってくるまでに千年かかる、とかそういうイメージなのかもしれません。

 それは、私たちの現実の世界と近い感覚なのだと思います。

 私たちの現実のこの世界で、死後に魂というものが存在するのかどうか、私たちにはわかりません。存在したとして、その魂がどこへいくのか、やがてまた戻ってきて次の生を受けることがあるのか、私たちにはわかりません。これはまさに、律が遠ざけられた状態、律は存在するのだが遥か遠くにあって、確かに見ることも感じることも信じることも触れることもできない状態なのではないでしょうか。

 だから、ラニ様が目指した星の世紀は、私たちのこの世界現パロなんです

 以上により『束の間の月光』の舞台はエルデンリング高校となりました。

 あとは、SSとしてはオチも必要という要請から、エルデンリング高校はラニ様が月に旅立つ前の束の間の遊びであるという設定になっています。また、自分はエルデンリングで一周目にラニ様エンドを見たあと、このあと二人で月に新婚旅行のはずなのになんで二周目いかないといけないんだよ……一緒に月に行くってラニ様と約束したのに……というつらい気持ちがあったので、それを何か救済したいと思った結果、あのようなエンディングとなりました。便利に使われたメリね。

 以上です。エルデンリング、最高~