『象られた力 kaleidscape』 飛浩隆

 ぞ、象られた力……。

 短編4編。最初の『デュオ』が良かった。かなり読ませる。敵(?)の強さのほどよい感じが良いし、音楽周りの設定と描写がばっちり決まっていて、登場人物の配置に無駄がなくて光っている。すごく好き。『呪界のほとり』『夜と泥の』はあんまり響かなかった。表題作『象られた力』はイメージの鮮やかさとかアクションシーンがすごい良かったけど、最後がちょっとよくわからなかった。

『ちょっぴり年上でも彼女にしてくれますか? ~好きになったJKは27でした~』 望公太

 ドルチェグストのステマ。

 最近のラノベは読まないのでよくわからないのですがみたいなことをいつも書く気がするけど別に昔のラノベはたくさん読んだわけでもないしラノベのことなんもわからん。実績のある作者の方らしいのでそうなるとこういう企画でこういう構成で書けるんだなと思った。文庫1冊の構成では明らかにないですよね。ネットの連載小説形式だよね? 連載小説のこともなんもわからんけど……。ジェネレーションギャップネタが世代的にマッチすれば楽しいのでは。というかラノベ読者の高齢化(ラノベ読者のことなんもわからん)に対して、主人公が高校生とかだともうきついでしょというのを受けて異世界に転生させるみたいな技が出てきたり最近は近親ヒロインは妹ではなく姪とか (それは違うね) まあローファンタジー路線にしても社畜を主人公にしてみるとかそういう想像力のジャンルが開拓されてきているところに、単に年の差お姉さんヒロインというのをもう一つ反転させた、非常に良く計算された一撃だと思う。出てくる世代ネタはことごとくヒロインと同年代の読者に刺さると思うし、しかし並べられた固有名詞のなかでドルチェグストだけが明らかに浮いてるからステマだと思う。絶対ステマですよこれ。

『姪探偵対腹踊り男』 ソルト佐藤

 Text-Revolutions Extraにて入手

 豪華四分冊だったので届いた時点で面白かった(?)。今回は踊る人形パロディ。それが腹踊り男になるってどういう意味だよと思ったが、腹踊り男が首なしになって、最終的に予想外のところに接続して面白かった。無理矢理にでも膨らんで重なり合うの好きなんですよね。メインの暗号部分、ネタは読者にはすぐわかるけど、でも読み取れない、というのが良い案配で、良く出来ていると思った。困ったときに読む封筒とか四コマもあって豪華だ。

『花のゆくえ』 佐々木海月

 Text-Revolutions Extraにて入手

 長編SF。空気感が魅力的で良かった。SFっぽさが面白い案配というか、SFが全面に押し出されているわけでは決してないんだけど、多分惑星の自転公転とかの設定にかなり気を遣って書いている感じが染み出ていたり、他にも植物周りとか本文に現れてないけど設定色々ありそうだなと思わされた。惑星の入植者は敗残者なんだけど開拓者という物語を描きがちっていう話の作りが上手いなと思った。

『殺戮にいたる病』 我孫子武丸

 は?????????

(以下ネタバレ注意)

 これもまた例によって、なんで買ったんだったか忘れた積み本読書で(最近ほんとそういうのばっかりなんだよな)、なのでどういう話だったか覚えていない状態で読んでいて、いやこれなんで買ったの? なんか多分、ミステリ系統で買ったんだと思うけど、なんかこれ普通に、サイコスリラーサスペンス的な路線じゃない? 単に狂気でエグい感じだけど……ん……? は????????? となった。

 読み返せば確かに、確かにそう書いてあるので完全にやられた感がある。トリックがテーマと連動しているのもすごいですね。

『おーりさんをさがせ!』 ソルト佐藤

 Text-Revolutions Extraにて入手。フーダニットでもハウダニットでもホワイダニットでもない、ヒロインのおーりさんがどこへ行ってしまったのかを毎回探すという、ホエアダニットミステリ連作。まずそのカテゴリ設定が上手くて面白い。コンセプト勝ちですね。そしてきちんと伏線を張って最後の最後まで無駄なく回収する丁寧な仕事が光る。しかし図がめっちゃ出てくるの笑ってしまった。軽いノリから後半重い要素も出るな……と思いきや一気に情報量が増えて加速した終盤はこれどうなったんだという感じに。ハッピーエンド……か? 会長がかわいかった。おーりさんの話をもっと読みたかった気がする。

『ライフ・ゴーズ・オン』 燐果

 Text-Revolutions Extraにて入手。SFというかファンタジーというかSFというかファンタジーという、まあこの二つって方向性によってはかなり一体化するけど、一体化系の、短編集。ポストアポカリプス要素もある気がする。「夜を塗り直せ」が一番好き。どうしてもこういう、設定と場を共有する連作短編のような形だと、設定だけ先行してしまいやすいっていうのがあるあるだと思うんだけど、それに陥らずに、ドラマがしっかりあって安心して読めた。竜人いいよね!

『神様のいない場所』 雲鳴遊乃実

 Text-Revolutions Extraにて入手。震災関係。センシティブな題材であることは間違いなく、ダメな人もいるだろうとは思うけれど、自分は特にダメとは思わなかったし、ある種、誠実に書かれていると思う。他のボランティアへの視線とか、”復興”への複雑に絡んだ心情とか、丁寧に描かれていて良かった。最後の部分もぞくりとさせられた。後書きによると、もとは長編の序章として構想したが短編としてリライトしたとのこと。リライト前の構想はわからないにせよ、確かに長編向きの内容ではあるように思われて、ここで終わってしまうのは読者としては若干もったいなく感じた。

『オニキス』 下永聖高

 短編5編。どれもSFとして(最後のは違うか)アイデアが良くて、描写も鮮烈な感じがする。特に『オニキス』と『三千世界』は良かった。チートコードみたいな雑だけど丁寧な設定良いよね。ただオチが弱いというかもう一ひねり欲しかった感じがあった。

『その日、朱音は空を飛んだ』 武田綾乃

 いやすごいっすよこれは。すごい作品だった。とりあえず黙って読んだ方が良いですよ。

 途中まで、いやほとんど最後までこれはどういう話なのかよくわからなかった。一応ミステリ要素なんだろうなと思って、一章ごとに語り手が変わる、それにより新情報が出てきて見方が変わってきて印象が二転三転、という、藪の中方式なんだけど、最後どこに着地するんだろうっていうのが全然見えなくて、まあでもともかく、感情がすごい、この作者は感情を書くのがすごいなぁと思って読んで、まあでも感情はすごいけどなんかふんわり終わるのかな、そしたらまあ文学的だけど、最終的には好みじゃないかななんて思っていたのだけれど、しかしなんか結構長いというか、思ったより分量あるよなと思って、で、最終章の最初で、おおってなって、最終章の最後、いやこれですよすごいですね。そういうのを用意してくれるとさ楽しくなっちゃうんだよな。いやー。これだよ。こういうのだよ。暗い爽快感というか。生きているうちにこれをやる、そして死んだ後には、っていうことだよね。すげー。すげーよ。なんとなく途中からこいつだよねっていう察しはあったし、すごく好きだったので、本当にこのラストは好きですね。ものすごいものを読まされたという感覚がある。イチオシです。