『クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い』 西尾維新

 なぜ平成最後の年にこれを初めて読むことになっているのかよくわからないけど読みました。構成的には好きなやつで、まあ楽しいんだけど、流石に冗長なきらいはあり、まあ戯言だって言ってるから別に良いのか……? どうしても殺人事件とかの話になってしまうと、そういう冗長パートもあんまり明るいギャグにできないので、そのあたりが弱いのかなぁと思った。

『〔少女庭国〕』 矢部嵩

 思考実験っぽい小説。奇怪。密室バトルロワイヤルモノかと最初は思わせ、ループモノかと思わせ、しかし読み進めるにつれてそういう作品ではないことが感じられてくる。実験というか、観測というか。と思ったら最後の方エモくなるの好き。基本的にはクソ小説だと思うけど。怪作。

『波の手紙が響くとき』 オキシタケヒコ

 筐底のエルピスシリーズで今をときめく作家オキシタケヒコ先生の「音」をテーマにしたSF小説。4本の連作短編。4本合わせていい感じに長編というか、一冊に話がまとまっているような感じもしつつ、話の構成というかギミックは四者四様。「エコーの中でもう一度」、「亡霊と天使のビート」はなんだろう、優しい感じのSF。正当っぽく科学している。「サイレンの呪文」は打って変わってオカルティックな要素がぶちこまれミステリ風SF。これですごい好きになった。「波の手紙が響くとき」は表題作にして集大成。ここまでに積んだ伏線をきれいに使い、オチでの話の広がりにはそうきたかと思わさせられた。音響SFなどというジャンル、どうしたって狭くなりそうなところを、こう使ってくるか、という。また、全編に渡ってゆっくりと登場人物たちを深めていくやり方が誠実な感じがして好感を抱いた。オキシタケヒコ先生は一日三万字書いてください。

『改訂 雨月物語 現代語訳付き』 上田秋成 鵜月洋(訳注)

 改めて読み直し。昔読んだときは青頭巾が一番好きだったのですが、読み直すと他の話も面白いし、良さあり。結局のところ仏教、特に禅宗の俺TUEEE小説っぽいよね(??)

 ところで、現在、『雨月物語SF合同』という企画を立ち上げており、雨月物語の9編をSF的解釈で二次創作なりオマージュなりする小説を9人で書こうとしています。乞うご期待。

『にんぎょばなし』 戸田鳥

 無料キャンペーンを拝見して。

 人魚にまつわる5つの掌編。人魚の概念は作品間で個別、かと思いきやつながりを感じさせるような話もあったりして、全体としてのバランスと言うか雰囲気が魅力的でした。『人魚とダンス』がおはなしとしては一番好き。『竜宮』がここに入ってくるのもアクセントとして良くて楽しい。ハコフグほしい。

『筺底のエルピス 6 -四百億の昼と夜-』 オキシタケヒコ

 いま最も熱いシリーズ継続中のSFラノベ。今回もまあ「は?」感がすごいから今すぐ全人類が読むべき。前半はまあなんだかんだ言って順当というかなるほどねという感じはあったけど、後半はだからこそという形でこのクリフハンガーは良すぎるし、二秒以内に続刊を出してほしい(二年くらいかかりそう)(勘弁してくれ)

『占領都市―TOKYO YEAR ZERO〈2〉』 David Peace  酒井武志訳

 やばすぎる小説の二作目。前作は小平事件、今作は帝銀事件。事件そのものの闇の深さとして、帝銀事件はより闇が深いということもあって、前作で見られた狂気の表現は引き続き研ぎ澄まされつつも、より事件そのものの描き方にシフトしているように感じた。前作は、事件を捜査する刑事の抱える秘密や周囲を取り巻く東京の闇の印象が強かったが、今作は事件そのものを『藪の中』方式で語り闇を深めていく。『藪の中』だなこれ、と思った時点で大体読めてしまうことではあるが、前作のようなミステリ的仕掛けはなく、闇が深くなって終わる。でも最後のオペラパートすごいですね……。三部作の最後は下山事件とのこと。まだ出てないっぽいが。

『宝石の翼 セリエルの空』 藤あさや

 第二十七回文学フリマ東京にて入手。同じSF列であらすじで気になっていたのと、拙作の感想をいただいたことがあったので。上記はKindle版。

 ”臍玉”を持つ選ばれた少年だけが操ることのできるエーテル機関を搭載した戦闘機で戦うファンタジー架空戦記モノ? 知識がないのですが航空戦とかの設定も結構深いみたいなのでそっち系の人も楽しめるんじゃないかと思います。がっつり長編(B6版二段組約160p)ですが非常に丁寧な作りで冗長さはなく、最後まで楽しく読むことができました。お話の型的には悲劇っぽいものの、重くなりすぎず、充実した読後感。

 面白いなと思ったのがSFっぽさが(特に序盤は)全面には押し出されていないところで、エーテル機関は奇跡や魔術の扱いであってその機序は云々されないというバランスの中で、しかし前半で挿話的に語られた決定論や未来予知や多世界解釈の話が後半で回収されてくるというのが良かったです。また、タイトルにもなっているセリエル音楽(というか十二音音階)がガジェット的にうまく活用されているのも良いなと思いました。関係ないけど最初メタルってテルミンで弾く曲がメタルなのかと勘違いしてすごいキャラだなと思ってしまって勝手に楽しくなってた。

『『百年の孤独』を代わりに読む』 友田とん

 第二十七回文学フリマ東京にて入手。タイトル買い。正確に言うと、タイトルで絶対面白いでしょと思ってパラパラめくったらどう考えても百年の孤独と関係なさそうな画像が挿絵として入ってたので面白いに違いないと思って購入。

 その名の通り、ガルシア=マルケス『百年の孤独』を代わりに読む企画。読解や紹介の要素が最初こそ多いのだが、途中からはエッセイのようでもあり、二次創作のようでもあり、脱線に脱線を重ねてマジックリアリズム的に混乱しながらも『百年の孤独』と並走していき、最後に『百年の孤独』と重ね合わせた『代わりに読む』ことへの筆者なりの答えが示される。自分の場合は割と最近に百年の孤独を読んでいたので、内容を思い出しつつ、脱線も楽しめ、ラストも気に入りました。なかなか他ではない読書体験。

『息 -Psyche- vol.2』 アナクロナイズド・スイミング

 第二十七回文学フリマ東京にて入手。架空の翻訳というテーマ設定が面白そうだったので。テーマに吸引力がある合同は強い。

『中東の『話屋』から聞いた物語』梅宮

 もういきなりめちゃめちゃ面白いですね。物語を研究した人の話が、最後に反転して物語に飲まれてしまう。単に昔話を翻訳したのだというのではなく、こういうメタな仕掛けとオチを用意してくれているのは本当に楽しい。姫様強すぎるぞ。

『アルダン共和国関連文書の紹介 ~主に偽魔術師の盛衰を中心として~』渋江照彦・伊予夏樹・江坂正太

 偽魔術師を巡る三つの史料を紹介。どこまでが架空なのか(いや全部架空だが)わからなくなる体裁で楽しい。時々仕込まれてるカタカナ語で笑う。結局筆者が三人なのかどうかは最後まで謎。

『空から塔が降ってきた話 ~《影重なる地》族に伝わる民話~』稲田一声(17+1)

 架空の言語という設定を使い、「ことばが異なれば見えるものも異なる」をテーマに多重解決ミステリっぽい話を展開。脚注のとぼけた感じが良い雰囲気を出していますね。「そうだったのか」のとこで笑った。

『ハイブリディーン諸島の創世神話』淡中圏

 ここまで並んできた作品の雰囲気を逆手に取り(?)、前半でちゃんと架空の神話をこれから書きます感を出しておいて特にそんなことはなかった。