『姪探偵対腹踊り男』 ソルト佐藤

 Text-Revolutions Extraにて入手

 豪華四分冊だったので届いた時点で面白かった(?)。今回は踊る人形パロディ。それが腹踊り男になるってどういう意味だよと思ったが、腹踊り男が首なしになって、最終的に予想外のところに接続して面白かった。無理矢理にでも膨らんで重なり合うの好きなんですよね。メインの暗号部分、ネタは読者にはすぐわかるけど、でも読み取れない、というのが良い案配で、良く出来ていると思った。困ったときに読む封筒とか四コマもあって豪華だ。

『花のゆくえ』 佐々木海月

 Text-Revolutions Extraにて入手

 長編SF。空気感が魅力的で良かった。SFっぽさが面白い案配というか、SFが全面に押し出されているわけでは決してないんだけど、多分惑星の自転公転とかの設定にかなり気を遣って書いている感じが染み出ていたり、他にも植物周りとか本文に現れてないけど設定色々ありそうだなと思わされた。惑星の入植者は敗残者なんだけど開拓者という物語を描きがちっていう話の作りが上手いなと思った。

『殺戮にいたる病』 我孫子武丸

 は?????????

(以下ネタバレ注意)

 これもまた例によって、なんで買ったんだったか忘れた積み本読書で(最近ほんとそういうのばっかりなんだよな)、なのでどういう話だったか覚えていない状態で読んでいて、いやこれなんで買ったの? なんか多分、ミステリ系統で買ったんだと思うけど、なんかこれ普通に、サイコスリラーサスペンス的な路線じゃない? 単に狂気でエグい感じだけど……ん……? は????????? となった。

 読み返せば確かに、確かにそう書いてあるので完全にやられた感がある。トリックがテーマと連動しているのもすごいですね。

『おーりさんをさがせ!』 ソルト佐藤

 Text-Revolutions Extraにて入手。フーダニットでもハウダニットでもホワイダニットでもない、ヒロインのおーりさんがどこへ行ってしまったのかを毎回探すという、ホエアダニットミステリ連作。まずそのカテゴリ設定が上手くて面白い。コンセプト勝ちですね。そしてきちんと伏線を張って最後の最後まで無駄なく回収する丁寧な仕事が光る。しかし図がめっちゃ出てくるの笑ってしまった。軽いノリから後半重い要素も出るな……と思いきや一気に情報量が増えて加速した終盤はこれどうなったんだという感じに。ハッピーエンド……か? 会長がかわいかった。おーりさんの話をもっと読みたかった気がする。

『ライフ・ゴーズ・オン』 燐果

 Text-Revolutions Extraにて入手。SFというかファンタジーというかSFというかファンタジーという、まあこの二つって方向性によってはかなり一体化するけど、一体化系の、短編集。ポストアポカリプス要素もある気がする。「夜を塗り直せ」が一番好き。どうしてもこういう、設定と場を共有する連作短編のような形だと、設定だけ先行してしまいやすいっていうのがあるあるだと思うんだけど、それに陥らずに、ドラマがしっかりあって安心して読めた。竜人いいよね!

『神様のいない場所』 雲鳴遊乃実

 Text-Revolutions Extraにて入手。震災関係。センシティブな題材であることは間違いなく、ダメな人もいるだろうとは思うけれど、自分は特にダメとは思わなかったし、ある種、誠実に書かれていると思う。他のボランティアへの視線とか、”復興”への複雑に絡んだ心情とか、丁寧に描かれていて良かった。最後の部分もぞくりとさせられた。後書きによると、もとは長編の序章として構想したが短編としてリライトしたとのこと。リライト前の構想はわからないにせよ、確かに長編向きの内容ではあるように思われて、ここで終わってしまうのは読者としては若干もったいなく感じた。

『オニキス』 下永聖高

 短編5編。どれもSFとして(最後のは違うか)アイデアが良くて、描写も鮮烈な感じがする。特に『オニキス』と『三千世界』は良かった。チートコードみたいな雑だけど丁寧な設定良いよね。ただオチが弱いというかもう一ひねり欲しかった感じがあった。

『その日、朱音は空を飛んだ』 武田綾乃

 いやすごいっすよこれは。すごい作品だった。とりあえず黙って読んだ方が良いですよ。

 途中まで、いやほとんど最後までこれはどういう話なのかよくわからなかった。一応ミステリ要素なんだろうなと思って、一章ごとに語り手が変わる、それにより新情報が出てきて見方が変わってきて印象が二転三転、という、藪の中方式なんだけど、最後どこに着地するんだろうっていうのが全然見えなくて、まあでもともかく、感情がすごい、この作者は感情を書くのがすごいなぁと思って読んで、まあでも感情はすごいけどなんかふんわり終わるのかな、そしたらまあ文学的だけど、最終的には好みじゃないかななんて思っていたのだけれど、しかしなんか結構長いというか、思ったより分量あるよなと思って、で、最終章の最初で、おおってなって、最終章の最後、いやこれですよすごいですね。そういうのを用意してくれるとさ楽しくなっちゃうんだよな。いやー。これだよ。こういうのだよ。暗い爽快感というか。生きているうちにこれをやる、そして死んだ後には、っていうことだよね。すげー。すげーよ。なんとなく途中からこいつだよねっていう察しはあったし、すごく好きだったので、本当にこのラストは好きですね。ものすごいものを読まされたという感覚がある。イチオシです。

『プラ・バロック』 結城充考

 前に、『躯体上の翼』を読んだときにめちゃめちゃ面白くてヤバいと思ったので、同じ作者の他の作品も読んでみるかと買って例によって長期間積んであった一作。悪くはなかったと思うけど残念ながら躯体上の翼ほどは楽しめなかった。躯体上の翼でハードルが上がりすぎていたかもしれない。

 日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作なので、ミステリーということになるわけだけど、提示した巨大な謎というか広げた大風呂敷に対して、パズラー的に正解が出せるわけでもなく、あるいは超常的な概念を導入してぶっこわしてくるでもなく、なんか、え、それでいいのかよという感じで畳まれてしまったのが不完全燃焼だった。納得感がない。かわりに雰囲気がもっと好みであればそちら方面で楽しむことが出来たのだろうけれど、そちらもそちらで、SF感やサイバーパンク性が入ってくるかと思うとそうでもないという、振り切れない感じがあった。

『インシテミル』 米澤穂信

 タイトルを明示的に回収してくれ!!!!! ネタバレ注意。

 なぜミステリにはミステリオタクが出てくるのかという話を突き詰めていったみたいな話で、まあこういう世の中になってくるとミステリオタクが出てこないとどうしようもないのかもしれないと思えた。普通に面白かった。大迫はなんかアーキタイプがありそうなキャラだな。この流れだとクラブ側になんかけりをつけないと上手く終われないんじゃないかって思ってたけど、須和名さんを使って最後こうしてくるのめちゃめちゃ決まっててすごく良かった。しかしタイトル、一応最後の方にちらっと出てきたけどそれきついでしょもっとちゃんと回収しろと思いつつ、メタ的にはものすごい回収されてるんですよね。ずるいね……。とても面白かった。