『bnkrR vol.14 名探偵』

 第二十六回文学フリマ東京にて入手

 テーマは名探偵、ということですが、名探偵出てくる作品のほうが少なくないですかね。あと表紙の名探偵は絶対犯人だろ。9作の短編小説を収録。特に気に入った5作の感想を書かせていただきます。

「超級探偵」松永肇一

 名探偵を人工知能とロボティクスで再現したテーマパーク「超級探偵」で起きる事件の話。横浜小説だ。これはもう設定勝ちというか、設定の密度がすごいので、読者を圧倒させるだけの力がある。なんかものすごい広がるというか。起こっている事件とその解決にそんなに物語性というかミステリ的な論理は働いていない(というのが「名探偵」というテーマを与えられたにしては少数派の側だと思う)が、世界観でしっかり読後感が残っていて楽しかった。

「奇祭探偵【カッパグライ】」塚原業務

 中年男性二人が奇祭の謎に挑む話。これ名探偵関係ないですよね(名推理)。伝奇ミステリとしてしっかりしていて、奇祭のネタも面白かったし、方言がいい味出してる会話劇パート含めて好きで、楽しく読めた。こういうタイプのミステリすごい好きなんですよ! しかしこの感想を書いている時、前回のvol.13で「怪談 kwAIdan」を書いた方の作品だと知ってびっくりです。方向性めちゃくちゃ違うじゃないですか。すごいな。

「少年探偵の母」星野トレン太

 こういう短編が合同誌に癒やしを与えるのですごい良いと思います。ちゃんと笑えるし、一発ネタっぽい割によく読むと小ネタからオチまでレギュレーション遵守してる(?)。鉄コン列車ネタが好き。この一瞬考えさせてから笑わすやつなー。

「クビキリロンリ・暗黒系」石動儀式

 首のない死体が出たらそういう符丁というのを扱った小説……なんですかね? これも短編にしてはものすごい要素がてんこ盛りに詰め込まれていたと思いますが、最終的にちゃんとまとめ上げて着地しているのですごいなと思いました。骨組みはミステリなんだな。こんだけバラ撒いて回収出来るの相当なんじゃないかと。カッコいい。

「奇祭探偵【石送り】」塚原業務

 もう一作読めるんですかやったー! 河童の肉もすごかったけど、殺生石を駅伝方式で運ぶっていう状況設定自体がすでに面白すぎるんだよなぁ。伏線の張り方もミスリードの仕方も、最後なんか気が抜けたような若干暗くなって終わるところとか、すごく好みです。

『ハイヌーン』 木屋瀬梯子(段)

 第二十七回文学フリマ東京にて入手(第二十一回文学フリマ東京の新刊)。

 短編6編を収録。ジャンルは、なんだろう。謎。はしごワールドは、基本的に意味はよくわからないのだが、なんかよくわからないけれど叙情的な情景が瞬間的に現出するようなところがあって、たとえば1作目のGrimshawなんて1ページしか無いのだが、詩に近いような形でこの本をうまく読者に導入せしめてると思う。

 あとは、ずるいフレーズというか笑えてしまう言葉(パワーワードという言葉をあんまり使いたくないけど、パワーが有るワードであることは間違いないだろう)が結構あってそれが好きで、「亀というのはつまりナローバンドだが」とか「なんで光る靴なんか履いてたんだよ」とか「ホールには真っ黄色の肉塊が詰まっているので入れない」とか好き。強い。作品としては特に『輪』と『SURRRRRENDER』が好きです。

『図書室には誰もいない』 白樺あじと(シーラカンス・バカンス)

 第二十七回文学フリマ東京にて入手

 ビター寄りの良質なミステリ短編が3本収録。

『古本屋に眠る』は古本屋に現れた旧友に関する話。トリックは順当ながら、主人公の鬱屈した心情などの表現が優れているのが良かったように思います。

『マンガを詰める日』はそのまま、マンガを詰める話。自分はマンガあまり読まないので、マンガ語りパートに乗り切れなかったのでちょっとそれが残念かなと。別にこの小説の瑕疵じゃないと思うけど、マンガパートに乗れなかったら成立しない作品ではある気がするので。

『図書室には誰もいない』が表題作で分量的にもこの作品が半分以上を占めており、これが一番好きです。なんだかんだこういう探偵ごっこをしてしまうミステリ研みたいなのに弱いんだよな。図書室の書架の一段分が盗まれるというのも導入として良いし、解決までの構造もしっかりしている。あとキャラが立ってる。俺は西村さんが他に制服のポケットに何を持ち歩いているのか気になるんだ。最後の最後の落ちはかなり突き放し気味で、えってなったけど、少し考えるとちょっと苦い系のこの作品集には合っている終わり方のように思えてきました。というわけで良かったです。

『日本現代怪異事典』 朝里樹

 とてもおもしろい。怪異読み物的なやつというよりはガチの事典。めっちゃ分厚い。筆者と同世代なことも相まってか、小学生のころ流行った怖い話とか、中学生のころ見てた怖いコピペとか回ってきたチェーンメールとか、そういう懐かしいやつがだいたい網羅されてて楽しい。あとババアが多い。ババアが進化してくやつ好き。

『BETRAYAL』 ナの字

BETRAYAL (pixiv)

「あまり明るくない」艦隊これくしょん二次創作小説。

 艦これのことはそんなに詳しくないんですが(は?)、この小説はすごいので2秒以内に読んだほうが良いです。長期連載が続いていましたが、この度完結とのことで、ラストは本当に良かったし2秒以内に最初から読み直したくなりました。そういう小説は強いぞ。

 二次創作の自由度が高いゲーム業界にあって、だからこそこの作品の強いところは主人公(?)のキャラクターであると思います。原作ゲームにおける透明なプレイヤーキャラである提督をどうするかという問は二段階くらい越えて、主人公(?)の『幌村』は提督ですら無く(?)、かといって全然無関係に勝手に創造されたキャラとも言えない。はてなが多すぎるのはまだ咀嚼しきれていないからですが。いやでも本当に、ここに関しては歴史的に見ても赤羽根Pか武内Pか幌村かと言って良いくらい成功している二次創作主人公なんじゃないかと思いました。この喩え要る?

 幌村の造形とヒヤヤッコ提督は白眉だと思いつつ、じゃあこの作品は設定で勝ったんですかといえばもちろんそういう事ではないと思います。艦娘と深海棲艦の解釈、レ級に対する意味付け、物語の結末のどれにせよ、他でやられていないであろうとは言えない内容と思うのですが、そこに至るまでの地獄のような道程を幌村たちが走りきったところに読者は苦しめられて安堵すると思いました。途中途中の重苦しい挿話や絶望的な描写、緊張感、そんな中に忍び込んでいるパロディとか笑い所(本当にそんなのありましたか?)、どれをとってもレベルが高い。

 ところで、艦これでなんかいろいろ仮託されがちな艦娘ランキングというのが業界にはあり、ベスト3は順に漣、あきつ丸、龍驤らしいんですが、揃っています(?)。そのあたりを間違いなく外していないのも本作のポイントではないでしょうか。艦これのことはそんなに詳しくないですが。

 ナの字氏のオリジナル長編とかも読みたいなと思っているので頑張って欲しいです。読んでいて楽しかったです。お疲れ様でした。

『りゅうおうのおしごと!5』 白鳥士郎

 5までで一旦一区切りついているということで。なんか4まで読んだ後5を読まずに置いてあったんですがアニメに追いつかれそうなのでようやく読みました。っていうかアニメはJS以外の要素を端折りすぎで早指しすぎてもったいないですよあれは……3切れか? 3切れは将棋じゃないぞ?

 普通に熱いし泣けてビビりました。めっちゃ良いですね……。

 一巻のときの感想から、5まで読んでずっと、ウェルメイドである、将棋の普及に貢献する力がある(取材すごい)、というところが評価ポイントとしてブレてないです。

 ところでニコニコのコメントの「羽生の擬人化」ホント好き。

『りゅうおうのおしごと!』 白鳥士郎

『星降り山荘の殺人』 倉知淳

 なんかすごいらしいという話を聞き、事前情報を入れずに読むべしということだったので事前情報を入れずに読みましたが面白かったです。というか基本的には面白かったはずなんですが、あまりにもツボにハマり過ぎて中盤で自分の中での期待レベルが上がりすぎ、最後の解決のところは「あれ、その程度?」となってしまったのが残念だった。しかしまあそれくらい楽しめた小説ではあり。ともかく各シーン冒頭に挿入されるやつが好きで、登場する度に「ww?w」ってなって楽しかったです。

『紙の動物園』 Ken Liu 古沢嘉通訳

 いま話題のケン・リュウ。なんか拙作の感想で触れてくださる方がいたり(ありがたや)、別の場でいやでも読んでないんだけどって言ったら「読んでないんですか?」とまで言われたので、そこまでなら読むかと思って購入。

 結論としてすごく良い短編集でした。確かに、恒星間宇宙船(播種船)的な話とか、のじゃロリ狐娘を蒸す機械とか、自分の好きな要素が結構出てきましたが(語弊)、そういう要素とは関係なく良い読後感を与えてくれる小説が揃っているように思いました。読み進めるうちにじわじわ好きになった。

 好きだった作品は、結縄、太平洋横断海底トンネル小史、文字占い師、良い狩りを。

『魔星』 フォーマルハウト

 第二十五回文学フリマ東京にて入手

 クトゥルフ短編集。クトゥルフ短編集だということを知らずにWeb上に公開されていた「黄ノ瞳話」のサンプルを読んで続きが気になったので購入。クトゥルフのことをよく分かっていないので、毎回こういうのを読むと、どこまでがクトゥルフ界の常識で、どこからがこの作品の作者の創作なんだろう、というのがわからなくて困る。クトゥルフ知らないのに読んでるこちら側に圧倒的に非がある。そろそろクトゥルフの素養でも身につけるか……。

「黄ノ瞳話」志菩龍彦

 おどろおどろしい感じ、取り憑かれる感じがよく表現されていて、冒頭部分を読んでそれがレベル高いなと思った。徐々に気持ち悪くなっていってクライマックスを迎える。怪談レベルが高いと思う。単に怪談だと吸い込まれたとこで終わるような気がするが、その後のシーンがあるのがクトゥルフっぽさなのかと思った。

「誰が猫を殺したか」狐屋

 猫目線のファンタジーっぽい雰囲気の作品。缶切りって用語とか、三つ名前があるとか面白いなと思ったけどなんかそういうTRPGがあるっぽいな(よくわかってない)。スミレのキャラづくりとかよく出来ていて楽しかった。最後ジンバについて触れてほしいなと思った。

「千冬」志菩龍彦

 お、百合か? まあガール・ミーツ・ガールということで。つまり百合です(本当か?)。 最初の挿話っぽい雰囲気作りのところがうまいのと、やっぱり不気味さとか狂気の表現がいいよなぁと思った。