『占領都市―TOKYO YEAR ZERO〈2〉』 David Peace  酒井武志訳

 やばすぎる小説の二作目。前作は小平事件、今作は帝銀事件。事件そのものの闇の深さとして、帝銀事件はより闇が深いということもあって、前作で見られた狂気の表現は引き続き研ぎ澄まされつつも、より事件そのものの描き方にシフトしているように感じた。前作は、事件を捜査する刑事の抱える秘密や周囲を取り巻く東京の闇の印象が強かったが、今作は事件そのものを『藪の中』方式で語り闇を深めていく。『藪の中』だなこれ、と思った時点で大体読めてしまうことではあるが、前作のようなミステリ的仕掛けはなく、闇が深くなって終わる。でも最後のオペラパートすごいですね……。三部作の最後は下山事件とのこと。まだ出てないっぽいが。

吸血鬼はなぜ鏡の中で上下反転しないのか?

【百合文芸】「吸血鬼はなぜ鏡の中で上下反転しないのか?」/「笹帽子」の小説 [pixiv]

 上記の作品で、『コミック百合姫×pixiv 百合文芸小説コンテスト』に参加しました。

 応募要項に「女性同士の交流の中で生まれる、特別な親愛が描かれた作品。思わず口にしたくなるようなセリフや、心に沁みるシチュエーションに出会えることを期待しています」と書いてあり、こういうのであってるのかというと多分あってない気がするので、それはいいんですけど、まあ書いて楽しいから良いんじゃないかなという気持ちで書きました。誤謬って思わず口にしたいからあってるかも知れない。

 すでに応募作品が450超となっており、それがコンテストとして多いのか少ないのかは知りませんが、しかし短編の百合小説が大量にあるというのは良いのではないでしょうか。頑張って渉猟していく。おすすめ情報があったら教えてください。あと小説書く人は今からでも間に合うから一日三万字書いて投稿してください。コンテストの推奨文字数は二万字以内だけど。

『宝石の翼 セリエルの空』 藤あさや

 第二十七回文学フリマ東京にて入手。同じSF列であらすじで気になっていたのと、拙作の感想をいただいたことがあったので。上記はKindle版。

 ”臍玉”を持つ選ばれた少年だけが操ることのできるエーテル機関を搭載した戦闘機で戦うファンタジー架空戦記モノ? 知識がないのですが航空戦とかの設定も結構深いみたいなのでそっち系の人も楽しめるんじゃないかと思います。がっつり長編(B6版二段組約160p)ですが非常に丁寧な作りで冗長さはなく、最後まで楽しく読むことができました。お話の型的には悲劇っぽいものの、重くなりすぎず、充実した読後感。

 面白いなと思ったのがSFっぽさが(特に序盤は)全面には押し出されていないところで、エーテル機関は奇跡や魔術の扱いであってその機序は云々されないというバランスの中で、しかし前半で挿話的に語られた決定論や未来予知や多世界解釈の話が後半で回収されてくるというのが良かったです。また、タイトルにもなっているセリエル音楽(というか十二音音階)がガジェット的にうまく活用されているのも良いなと思いました。関係ないけど最初メタルってテルミンで弾く曲がメタルなのかと勘違いしてすごいキャラだなと思ってしまって勝手に楽しくなってた。

2018年買ってよかったもの

 アフィブログなので商品の紹介をします。

 この冬、ガウンタイプの着る毛布と併用すると捗るぞ。

 すごいなんというか、味がする。

 なんかセールのときにノリで買ったんだけど、結構良かった。30秒ごとに震えて上下左右2分で1セット終わるようにガイドしてくれるのが良い。歯磨きめんどくさいけど2分って言われたらまあ2分ならやったるかという気持ちになる。スマホ連携はめんどくさいからやってません。じゃあもう一個下のモデルで良かったんじゃないか?

 今年の夏は異様にやつが多く出没したので重宝した。ゴキジェットとかの殺虫剤より制圧力は弱いけど、単に氷なので食卓周りでも遠慮なく噴射できるから、その分を加味すると殺虫剤より良い。贅沢に使って倒せばいい。

 新生児をあやすのに最強。

 これもセールのときに買った。剃れる。剃れまくるのでプレシェーブローション使ってる。

 まあFire HD8はタブレットとしてはゴミみたいなもんだけど安いしこの袋で防水化して風呂でアニメ見たりするのに使ってる。結局タブレット市場が全然盛り上がってなくて、それなりなスペックでそれなりな価格の防水タブレットってあんまないんですよね。

 カメラとしてこれくらいの大きさじゃないと手軽に撮れない感じになってきた。最近は娘の写真しか撮ってません。

 ロングフライト三種の神器。耳栓は前から使ってたけど、今年は結構長距離が多くて装備を増強した。ネックピローは多分ビーズクッションタイプのやつとかのほうが良いのあるとは思うんだけど、どうしても邪魔になるのでこの膨らますやつがバランス型だと思う。あとこのアイマスク結構良くて、目に直接あたらないので、布のぺたっとしたやつより眠りやすい気がする。これ三つ装備したら結構寝れます。10時間超えフライト乗り継ぎ2連とか、寝ないとやってられん。

『『百年の孤独』を代わりに読む』 友田とん

 第二十七回文学フリマ東京にて入手。タイトル買い。正確に言うと、タイトルで絶対面白いでしょと思ってパラパラめくったらどう考えても百年の孤独と関係なさそうな画像が挿絵として入ってたので面白いに違いないと思って購入。

 その名の通り、ガルシア=マルケス『百年の孤独』を代わりに読む企画。読解や紹介の要素が最初こそ多いのだが、途中からはエッセイのようでもあり、二次創作のようでもあり、脱線に脱線を重ねてマジックリアリズム的に混乱しながらも『百年の孤独』と並走していき、最後に『百年の孤独』と重ね合わせた『代わりに読む』ことへの筆者なりの答えが示される。自分の場合は割と最近に百年の孤独を読んでいたので、内容を思い出しつつ、脱線も楽しめ、ラストも気に入りました。なかなか他ではない読書体験。

『息 -Psyche- vol.2』 アナクロナイズド・スイミング

 第二十七回文学フリマ東京にて入手。架空の翻訳というテーマ設定が面白そうだったので。テーマに吸引力がある合同は強い。

『中東の『話屋』から聞いた物語』梅宮

 もういきなりめちゃめちゃ面白いですね。物語を研究した人の話が、最後に反転して物語に飲まれてしまう。単に昔話を翻訳したのだというのではなく、こういうメタな仕掛けとオチを用意してくれているのは本当に楽しい。姫様強すぎるぞ。

『アルダン共和国関連文書の紹介 ~主に偽魔術師の盛衰を中心として~』渋江照彦・伊予夏樹・江坂正太

 偽魔術師を巡る三つの史料を紹介。どこまでが架空なのか(いや全部架空だが)わからなくなる体裁で楽しい。時々仕込まれてるカタカナ語で笑う。結局筆者が三人なのかどうかは最後まで謎。

『空から塔が降ってきた話 ~《影重なる地》族に伝わる民話~』稲田一声(17+1)

 架空の言語という設定を使い、「ことばが異なれば見えるものも異なる」をテーマに多重解決ミステリっぽい話を展開。脚注のとぼけた感じが良い雰囲気を出していますね。「そうだったのか」のとこで笑った。

『ハイブリディーン諸島の創世神話』淡中圏

 ここまで並んできた作品の雰囲気を逆手に取り(?)、前半でちゃんと架空の神話をこれから書きます感を出しておいて特にそんなことはなかった。

『祝祭』 セロトニン工場

 第二十七回文学フリマ東京にて入手。ブースに行ったときにドストエフスキー『悪霊』がどうとかというのとアンナ・カヴァン『氷』がどうとかという文字列が見えて面白そうだったので。「祝祭」という共通テーマで書かれた短編ということですが、祝祭という単語だけなので解釈の自由度も高く、ほぼフリーテーマに近いのかなと思いました。

『ディアスポラ』 meme

 多分これが『悪霊』のやつ。書き方とか描写がすごく丁寧で良いなと思いました。話としてはプロローグ的というかこの後どうなるんだというところで終わった感じがあるので、続きを読みたいです。

『バイタルサイン』 kawaiiyumegirl

 エモいですね。人格をAIに移植して永劫を漂わせるという設定はよくある(すき)ところ、雛人形を使ってくるのは面白いなと思いました。エモいですね。

『水鏡』 Nuit.

 神話っぽい話。なんか元ネタにした神話があるんでしょうか。食ったら文字が頭の中を巡るっていうシーンが良かったです。好みの問題ですが、必然性がなさそうな漢字変換が可読性を下げているのが残念に感じました。

『星の夜』 春紫苑

 百合じゃん。百合か? なんかこう耽美っぽい映像をつけて読みたい感じですね。やはり合同誌に百合枠は必要なんだよな……。

『享楽のうた』 akkt

 これが『氷』のオマージュのやつで、本誌の中で一番好きでした。氷っぽさが結構出てると思う上に、引用されているラカン的な(いやラカンは詳しくないですけど)祝祭解釈にも引き寄せられる読後感でよかったです。

『BEATLESS』 長谷敏司

 なんか前からいつか読んだほうが良さそうだと思ってたけど読んでなかったけど布教されたので読みました。普通に面白かった。なんか読んでてエロゲかとかアニメかとか思ったのだが、実際もとはエロゲだったんだけど色々全年齢にも展開していって最近はソシャゲになってソシャゲから入った層が元はエロゲだと知らないみたいな雰囲気を感じなくもない作品だったのだが(Fateやったことないです)、なんか読んだ方が原作(連載をまとめたやつ)ではなくてアニメ化とかを受けて加筆修正再構成したバージョンのやつだったらしいのでそれが影響しているのかもしれない。映像化を前提とした無駄な尺のなさというか(いや、全体としては長いのだが)が感じられた。

 レイシアかわいすぎませんか? レイシアお姉ちゃんのバイノーラル甘やかし音声を出してくれ頼む

『怪し噺』『怪し噺 弐』 大和愛(大和堂)

 第二十七回文学フリマ東京にて入手(引用ツイートは書影がちょうどよかったので過去のものです)。

 江戸時代の怪談(現代で言うホラーというよりは、怪異譚)を現代語訳したもの。読んだことのない話ばかりで楽しめました。弐の方が好きな話が多かったように思います。『頭を殴り合う寺』は頭を殴り合うのが意味不明で笑える。『真紅の撃帯』はホラーとは違う、怪異話の特徴が随所に現れていて、不思議な迫力があって好きです。あとこれは離魂記の影響受けてる話だなと思って、調べたのですが、剪灯新話の金鳳釵記というのが間にあるらしく、このあたりちゃんと勉強したらおもしろそうだなと思いました。

『鈴ヶ森ノスタルジー/探検部の花子さん』 雨下雫/小島宇良(C1講義室)

 第二十七回文学フリマ東京にて入手。文庫版両A面仕様。

『鈴ヶ森ノスタルジー』は、雨下さんの作品を何作か読んでいるともはや定番となった京急要素、無用者要素、そしてこの(なんて表現が良いのかわからん)ヒロイン像の揃った楽しい非日常小説。オンの設定とか、オカさんの風貌や騒がしさがちゃんと(?)回収されるところとか、ふわふわした雰囲気小説にならずにしっかりまとめていて気持ちいいなぁと思いながら読めました。楽しい読後感。

『探検部の花子さん』は、なんでしょう、幽霊青春モノ? プロローグにて感覚で百合を確信。ちょっと重い話もあり、そこはうっとなってしまうところもあるのですが、花子さんの存在がうまくそこを緩和する役割として働いており、最終的にこの花子さんの話が続きで読みたいぞ、という気持ちにさせられる。あとオニオオハシの巨泉が気になる。