『伝奇集』 J.L.Borges  鼓直 訳

 ボルヘス。表紙こわすぎるから読んでみたかった。

 読むのは結構大変。ぐるぐる回転する。あと訳文きつくないですか。Wikipediaに「簡潔な文章で」とか書いてあるから原文は簡潔なのか。まあスペイン語は読めない。大体において「これありか」的な作品が多い。円環の廃墟、バビロニアのくじ、バベルの図書館、八岐の園、記憶の人フネスあたりが気に入った。これで結構SFだし結構数学っぽい(?)のがすごい。バベルの図書館はもうストレートだからいいけれども、記憶の人フネスの『計算法』の畳み掛け方は素晴らしかった。

『赤と黒』 スタンダール

フランス文学読もうと思ったがむしろ岩波にありそうなフランス文学をこれしか知らなかったのでとりあえず読みました。

社会的側面は、世界史の知識が乏しくよくわからなかったんだけれども、そういう視点は排除しても、恋愛小説としてとても面白かった。

ジュリアン、レナール夫人、マチルダの三者の人物像がしっかりしている。レナール夫人は母性使ってるよなと思ったけど、今調べたらやっぱり母親をモデルにしたという説があるらしい。だよね。

こういう最後破滅(?)っぽく終わる場合、どうしても最後の終わらせ方にちょっと無理が出るわけだけど、まあこれも仕方ないかなという感覚。下巻の真ん中あたりが一番面白かったかな。でもこのパターンにしてはかなり面白く終わったとは思う。最後の方のジュリアンが自分と話してるみたいなシーンとか、好きですね。
時間がたってからもう一回読もう。

『読書について』 ショーペンハウエル

三篇収録されている(『思索』『著作と文体』『読書について』)のですが、真ん中の『著作と文体』がとても興味深かったです。

匿名批評についての話や、思想と文体の関係の話など。うんうんと思わずうなずいてしまうような鋭い意見もあれば、僕自身がブログで書き散らしている文章のことを考えて頭が痛い批判もあり、一方で賛同できかねる内容もあり、色々と考えさせられました。まあ、ショーペンハウエル的にはドイツ思想・文学界に向けてこれを書いているだろうと思われますし、さらには明らかにヘーゲルへの直接個人攻撃とかもあるので、現代日本の一大学生である僕に適応できるかと言えば必ずしもそうではないトピックも数多いわけですが、それでも役に立ちますね。

『詩学』 アリストテレース

うーん、アリストテレスって紀元前300年代ですよね。日本がまだ弥生時代ですよね。そう考えるとないわって感じになります。

形としては全然体系的にまとまっているとは言えないものではありますが(それは僕の頭が足りないのかもしれないし、「体系的」というものへの感覚が当時と今とで違うのかもしれない)、中身を見れば文学理論としての普遍性は十分あると思います。物語の筋の作り方の話とか、認知とか性格とか模倣(再現?)とかなんとか。個人的に「筋の外」という言葉が、その概念は理解していたけど、そこに名前を付けてもらえたことでしっくりきました。

併録されているホラーティウスの「詩論」はよくわからなかった。引用が多いみたいだけど。というか「詩学」の方にしても、具体的に悲劇を引用して解説しているところは、悲劇とかの知識のない僕には読めませんでした。

『悪霊』 ドストエフスキー

上下巻それぞれ700ページ近い。長かった。岩波文庫のくせに700円もするんですからね! いや、買ってないですけれど。図書館活用してます。

物語の内容以前にまず一番印象深かったのは、語り手の半透明性です。一応語り手(新聞記者らしいですね)が存在して、一人称部分で語られるところとか、事件に直接関与するところがあったりします。一方、三人称視点で、神の視点のごとく語る部分もあったり、うーんわけわからん。「私は必死にスチェパン氏の元に走った」とか「私はピョートルに殴りかからん勢いで……」みたいな、明らかに語り手の存在感が強調される文章がある一方で、「スタヴローギンはそのまま数時間のあいだ、一人で想念に沈んでいた」みたいな、どう考えても神の視点な文章もある。(ここに書いたのはうろ覚えによる引用です)
ともかく、そのとらんするーせんとな語り手が印象的でした。

話の内容もまた壮大で、各人物の動かし方にドストエフスキー的なうまさがあって、面白かったです。ただ、無駄に殺しすぎかなぁってのと、若干構成の緻密さが劣るという点で、『罪と罰』『カラマーゾフの兄弟』には、自分の中で及びませんでした。

『貴族の巣』 ツルゲーネフ 

構成がしっかりしていて、無駄なものが無いのに、それでいて重厚。

また、この余計者(лишний человек)スタイルは、読んでいてとても面白いです。というか、余計者の主人公が、以後の日本文学に影響与えてるんだなぁってのがなんとなくわかります。ロシアは先を行っていたんですね。

『外套・鼻』 ゴーゴリ

ゴーゴリってこんな感じなんですね。なかなか好きです。
外套は、序盤微笑ましい感じの話なのかと思ったら、最後心霊モノみたいになって、うおおって感じでした。
鼻は、序盤から不条理すぎて、全部うおおって感じでした。ゴーゴリってそんな不条理なものを書いてるとは全然知らなかったので、完全に不意を突かれて、ただただ笑えました。しかも不条理の段階ってものがちゃんとできていて、鼻がパンから出てくるレベルでの不条理と、鼻が服着て歩いてるレベルの不条理とかが、ちゃんと多段階ロケットになっていて、すげえ。

『スペードの女王・ベールキン物語』 プーシキン

『スペードの女王』と、ベールキン物語より『駅長』を読みました。
まあ『駅長』は歴史の流れ的な意味でなるほどなっていう感じではありましたが、『スペードの女王』が強烈ですね……。かなり衝撃を受けました。

一種の霊モノって言えばそうですね。もし現代風にアレンジしたら世にも奇妙なとかの雰囲気に近いかもしれない。
章だての切り方、クライマックスへの盛り上げ方、ラストのオチ(?)、最終段でのひき方、全部うまいと思います。