『雨の島』呉明益 及川茜 訳

 自然とオブセッションの話だと思った。自然、特に動物の描写、それに対する人間の思いに迫力があり、読み応えがあって味わい深い。もう一つ共通点的に出てくる、クラウドストレージの中身を親しい人に開示してしまうウイルスの設定は、なんか位置づけが中途半端に感じてよく分からなかった。全部面白かったけれど、「闇夜、黒い大地と黒い山」(ミミズ)、「雲は高度二千メートルに」(ウンピョウ)、「サシバ、ベンガル虎および七人の少年少女」(鷹と虎)の三作が特に良かった。

『遠野奇談』 佐々木喜善 石井正己編

 これは面白いなぁと思った。アカデミズムに整形されてしまった(?)遠野物語に対するカウンター(?)。「現に我々の間に、かくのごとく生き、そしてかくのごとく成長しつつある実に著しい社会の現象」としての物語は、柳田民俗学と現代の怪談や都市伝説とをつなぐ点であるように思えた。