『その可能性はすでに考えた』 井上真偽

 論理プロレス。明らかに噛ませ犬でしょみたいなキャラ(因縁あり)が次々出てきて不均衡論理バトルを挑んでくる無茶苦茶ぶりが笑える。雑なバトル漫画じゃん。もう2人目出てきて同じ形式のバトル始まった段階でこれラスボスの攻撃ぜったいアレでしょと思ったら案の定それだった。でもその無茶苦茶な中にきちんとロジックを(無茶苦茶なりに)作り最後まで多段で落として綺麗にしてくるのは安定感あって良かった。

↑マジで何

『スノーホワイト』 森川智喜

 講談社Kindle本50%ポイント還元だったときのソルト佐藤さんのデッキから。信頼できるデッキだ!!(まだ一冊しか読んでないけど!!)

「なんでも知ることのできる鏡」を持つ反則の名探偵少女の特殊設定ミステリ。第一部の短編は特殊設定日常の謎のような感じで始まり、こういうの良いよねと思って読んでいたら、第二部で怒濤のスピード感で特殊設定バトルが始まって、こういうの良いよね!!となってしまった。良かった。悪役が輝いてる。悪い悪役は良いな。なんかちょっと調べたらこの悪役のシリーズなのかこれ……。

『丸太町ルヴォワール』 円居挽

 昔懐かしい香りがする……。変な名前のキャラが無駄な話をしているパートはなんか色んなもの(婉曲)を劣化させたみたいな感じ(婉曲)になっててちょっとつらかった。1章で挫折した読者の屍が見える見える……。しかし後半、双龍会とかいうトンデモバトルが始まってからは無茶苦茶になるのが面白かった。こういう勢い好き。オチも良かった。こうなると続きが読みたい。

『首無の如き祟るもの』 三津田信三

  刀城言耶シリーズ3作目。といっても刀城言耶あんまり出ないんだけど、そのあんまり出なさが良い形で活用されててすごすぎた。

 今回は初めから本文が連載小説であることが明示された上で、作者が犯人ではないですとかわざわざ断り書きがしてある。これをどういう形で使うのかなと思っていたがきちんと満足できる内容。また、タイトルの通り首無し死体ものなので、セオリーとして入れ替えトリックの疑いが常にかかってくるというところも、これまた最大限活用したすごい作品だった。このクオリティでシリーズ作品が出せてるのすごすぎるな。

『殺戮にいたる病』 我孫子武丸

 は?????????

(以下ネタバレ注意)

 これもまた例によって、なんで買ったんだったか忘れた積み本読書で(最近ほんとそういうのばっかりなんだよな)、なのでどういう話だったか覚えていない状態で読んでいて、いやこれなんで買ったの? なんか多分、ミステリ系統で買ったんだと思うけど、なんかこれ普通に、サイコスリラーサスペンス的な路線じゃない? 単に狂気でエグい感じだけど……ん……? は????????? となった。

 読み返せば確かに、確かにそう書いてあるので完全にやられた感がある。トリックがテーマと連動しているのもすごいですね。

『ハサミ男』 殊能将之

 ネタバレ注意。

 叙述トリック系の古典(?)ということだけ聞いていた状態で買って積んであったのを忘れた頃に読み出したので、叙述トリック系だということを忘れて途中まで読んでたので、良い感じに取り組めて良かった。ここまで読んじゃった未読の人は忘れるまで積んでから読んでください。

 まあ違和感が確かにあったし、メインのトリックに関しては割とフェアだしよく出来てるんじゃないかなと思います。さすが古典化しているだけあった。ライターみたいな豪快さは嫌いじゃないのであれも全然オッケーです。しかし真犯人の動きにちょっと無理ないですかね。まあそんなもんか。最後のオチがめっちゃ好き。

『図書館の魔女 烏の伝言』高田大介

 超弩級ファンタジー『図書館の魔女』続編。シリーズ特設サイトがあるので今すぐ訪問した上で、『図書館の魔女』1、2、3、4、『図書館の魔女 烏の伝言』上、下を購入して読め。急げ。

 前作から、一体どのような続編なのだろうと思っていたけれど、読み始めるとどうも全く違う舞台、全く違う登場人物たちで、前作の登場人物たちとの関係がどうなってくるのかわからないところから始まる。登場人物一覧の最後の方に高い塔のメンツが載ってるけど、なかなか出てこない。一人、この人はあの人ですよねというのがいるけど、それだけで、いやマツリカ様いつでるんだよ、早くマツリカ様来いよ、そろそろ上巻終わるけどマツリカ様まだ……いや、上巻終わ……おもしれえ!!!という感じでした。もともと最強の安楽椅子探偵みたいなところがあるマツリカ様が、しかし自ら世界を股にかけて打って出るというのが前作の面白さの一つでもあったと思うけれど、今作は正しく安楽椅子探偵として機能していて(かなりミステリ味ある)、良くも悪くも主人公ではないところにいる。代わって、では一人主人公がいるのかと言えば一人に定まるものではなくて、より群像劇的な方向が強化されているのかなと思った。それはテーマの一つでもある、裏切り者の話にもつながってきて、何重にもひっくり返す仕掛けがとても面白かった。そういう意味では『図書館の魔女』シリーズとしてはスピンオフであり、大きな構想の中では助走・準備ではないかと思われて、キリヒトも含めた次の話が早く読みたくて仕方がない。

 前作にも増して文章がかっこよく、度々知らない言葉も出てくるけれど、読んでいて気持ちが良い。冒頭、「初夏の黎明に吹きおろす山風は冴えざえとした気流に水分を孕み、頂を覆う這松の新緑あざやかな葉叢に一つひとつ鈴をつけるように露を結びながら低く重たく谷間に這いおりていく。」から始まるシーンだけで頭をぶち抜かれてしまう。ぶち抜かれませんか?

 最後がやっぱり手紙で終わるのが好き。続編超期待。

『図書館の魔女』 高田大介

 大人になってから読んだ中で圧倒的に一番面白いファンタジー小説。

 そもそも自分は子供の頃はファンタジーが一番好きなジャンルでたくさん読んでいたけれども(このリストとか)、大人になってからは読むことが全然なくなって、特にハイファンタジーはまず食指が動かなかった。理由はよくわからないがローファンタジー的想像力を好むようになり、それは単に自分の年齢の変化だけでなく世の中の流れとしてもそうであるような気がする。それがこの小説は分類的には完全にハイファンタジーなんだけれども、超絶面白く、ド刺さってしまったので驚いた。

 ともかく長い。単純にプロット的な分量も多いし、文章もひたすらに書き込みがなされており、濃密。読むのにはかなりの時間がかかったけれども、それでいて一切ダレることなく、読むのが苦にならないのが不思議。人物、文化、歴史、そしてなにより”言葉”に対する圧倒的な緻密さで描き出される世界にのめり込まされて、久しぶりにこのタイプの読書体験があって嬉しくなってしまった。二巻の(単行本のときは上下巻だから、きっと上巻の)最後のシーンがめちゃめちゃ良くて、そこからはもう一気に進んでしまう感じだった。

「マツリカ様はわたしを馬鹿にするのが生き甲斐なんですか」
 ──そうだよ?

↑ここすき

『西南シルクロードは密林に消える』 高野秀行

 成都からビルマ北部を通ってカルカッタに至るまで、かつて存在したとされる西南シルクロードを踏破するエクストリームノンフィクション。ゲリラの手を借りて密入国しジャングルを歩いたり象に乗ったりと奇想天外で、合間に挟まれる人間観察や文化・社会に対する考察、政治事情についての情報もとても面白い。中国公安に尋問されるシーンが良かった。

『凶鳥の如き忌むもの』 三津田信三

 刀城言耶シリーズの第2作。前作の『厭魅の如き憑くもの』がすごく面白かったので、そこの期待値からすると本作は若干もう一息ほしかった感はあるものの、絶対値で言うと十分良かった。伝奇・怪異的要素が挿話も含めて凄まじく、密室からの消失トリックも良かったと思う。が、『厭魅』のような圧倒的なラストの振れ幅を期待していると、そこまでは届かないという感じがあった。しかしこの次のシリーズ3作目の評判がえらく良いらしいのでそれに期待したい。